たった数百人で「反・自民党」のネット世論を形成したSNSユーザーの正体とは?
つまり、一番左端のアカウントは反自民党ポスト拡散数1位(ちなみに拡散数は5万3446です)のアカウント、その右隣り(というより下)は、拡散数2位のアカウント……という形になります。 ほとんどのアカウントがx軸に平行な直線のように見えるのは、多くのアカウントが拡散数1(つまり一度もリポストされておらず自身の一回のポストのみ)ということを表しています。 ● SNSでは0.2%の人の大きな声が まるで世論かのように見えてしまう この図表から分かることは、少数のアカウントによるオリジナルポストが世論形成の大部分を担っているということです。 実際、約190万件の拡散のうち、約52%の拡散数が、わずか200のアカウント(約0.2%)によるオリジナルポストから発生しています。 すなわち、少なくとも10月19日から10月30日の投稿においては、0.2%のアカウントが約52%のX世論を作っていたことになります。 ここで注意していただきたいのは、リポストは他のアカウントによってなされますので、多くの人が拡散に関わった事実はあるということです。ただ我々の手元のタイムラインに表示される言説のほとんどが、ごく少数の人によるつぶやきであるということです。 ちなみに、拡散数1位のアカウントは小沢一郎事務所の公式アカウント、2位は一般市民、3位のアカウントは既に削除されていたため確認ができませんでした。また、最も拡散された投稿はリポスト数9422回の、共産党の小池晃議員による投稿でした。
以上のように、わずかなアカウントによる投稿が広く拡散され、あたかも「ネット世論」であるかのような様相を呈することはよくあります。 例えば、ネット上の炎上現象を例にとってみましょう。国際大学の山口真一氏が具体的な炎上事例をいくつかピックアップして調査したところ、次のようなことが明らかになりました。 ● 大炎上に見える事件でも 実際の批判者はほとんどいない まず、炎上に参加する(書き込みをする)人の数は炎上1件当たり2000~2500人程度。これがX上で起こったとして、それら書き込みをリポストやURLのシェア等で拡散する程度は、オリジナルの投稿者数の21.4倍でした。 例えば、2000人が炎上に参加したとして、リポストやURLのシェア等を含めた総投稿数は4万2800件となります。これがさらに各ユーザのフォロワーの目にとまることになります。 2016年時点での平均フォロワー数は648で、このうち10%がその炎上を目にすると仮定すると、わずか2000人が参加した炎上ネタを、約280万人の人が目にすることになります。これにさらに、まとめサイトやネットニュースでの取り上げが行われると、より多くの人が目にすることになります。しかし、当初炎上に書き込みを行った人はわずか2000人でした。 以上のように、オリジナルの炎上参加者は非常に少なくても、それを目にする人は非常に多くなるという現象がソーシャルメディアでは生じるのです。
谷原つかさ