フィアット「127」にアバルト版があった!? 日伊のオーソリティが仕上げた「レストモッド」は走りも音も超・刺激的です【旧車ソムリエ】
70年代の欧州における小型車の定型ともいうべき傑作車
誕生早々から大ヒットを博した127は、当初2ドア版のみのラインアップだったが、翌1972年にはテールゲートを備えた「3P(トレポルテ)」も追加。デビューからわずか3年後に相当する1974年6月には、フィアットより、トリノ・ミラフィオーリ本社工場からラインオフした127が100万台に到達したと発表された。これは、以前のベストセラーである「セイチェント(600)」が100万台の生産に7年を費やしたことと比べれば、まぎれもなく快挙であった。また、デビューイヤー翌年の1972年には、128に続いて「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」を獲得するなど、この時代の欧州における小型車の定型ともいうべき傑作車となった。 ちなみに1978年以降には、1050ccの4気筒SOHCエンジンに、アバルト製のマフラーを与えたスポーティバージョン「127スポルト」も設定されたものの、正式なアバルト版はアウトビアンキA112のみの特権とされ、フィアット127に用意されることはなかった。 しかし今回の試乗車両は「127 トリブート・アバルト」と銘打ち、イタリアと日本のフィアット/アバルト・オーソリティが持てる知識と技術を駆使して製作した、夢の1台となっていたのである。
トリブート・アバルトを標榜する、極上のレストモッド
今回の「旧車ソムリエ」取材にあたってご提供いただいたフィアット127は、昨今のクラシックカー界ではトレンドのひとつとなっている「レストモッド」車。フィアット ヌォーヴァ500をはじめ、フィアットおよびアバルトについては日本最高のオーソリティである「チンクエチェント博物館」が、このほどイタリアから直輸入したばかりのものである。 ご存知の方もいらっしゃるかもしれないが、同博物館ではヌォーヴァ500をベースとするレストモッドBEV「フィアット 500ev」を自らプロデュース。その製作をクラシック・フィアット専門のトリノのカロッツェリア「オフィッチーネ・ジェンティーレ(通称OG)」に委託しているのだが、この127はOGの社長がご自身のためにコツコツと製作していたものとのこと。その製作過程を見ていたチンクエチェント博物館の伊藤代表がすっかり気に入ってしまい、ひたすら頼み込んで譲渡してもらったとのことである。 そしてクラシックから現代のモデルに至るまで、フィアットとアバルトの魅力を知り尽くしたチンクエチェント博物館では、メーカー非公認ながら「127 トリブート・アバルト」というウィットに富んだニックネームを奉っている。 その名が示すようにアウトビアンキ「A112 アバルト 70 HP」用のアバルト製エンジンとトランスミッションをコンバート。シリンダーヘッドやピストン、コンロッドにもチューニングを施している。またカムシャフトもより高速型のものに取り換えたほか、キャブレターはスタンダードのA112アバルト用よりも大径な、アルファ ロメオ「ジュリア」などにも使用されるウェーバー40DC0Eに換装。さらに初代「プント」(1993~1999年)用のフロントブレーキに「セイチェント」(1998~2010年)用のリアブレーキ、そしてブレーキブースターもツインにするなど、かなり高度なチューニングが施されている。
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