【トランプが起こした左派支持層の変化】フランシス・フクヤマが語る第二次トランプ政権の見通し
サプライチェーンは大混乱し、国内企業は関税の免除を求め、大統領に取り入ろうとし、汚職や縁故主義が起きる。かかる関税引上げは、他国による報復を惹起し、自由貿易は崩壊する。これに直面して、トランプは恐らく措置を撤回するだろう。 重要な変化は、外交政策でも起きる。対ウクライナ武器供与の停止、北大西洋条約機構(NATO)からの脱退、同条約5条の不履行等の可能性もある。米国に代わるNATOのリーダーはおらず、NATOがロシアや中国に対抗できるかは疑わしくなる。 東アジアの同盟国等も困難に直面するだろう。トランプは台湾問題で中国と取引をするかもしれない。例外は中東だ。ネタニヤフによるハマス、ヒズボラ、イランへの戦争は全面的に支持するだろう。 大統領、上下両院にわたる共和党の大勝は、トランプにやりたい放題を許す委任として解釈されるだろう。我々が希望できるのは、残っている幾つかの制度的防波堤の維持だけだ。しかし状況は、改善する前にさらに悪化するかもしれない。 * * *
自由尊重と政府介入規制への脅威
フランシス・フクヤマの上記論説は、今回のトランプ圧勝の背景と今後の見通しについて、極めて納得できる説明をしている。 トランプ圧勝の背景については、民主党が人種的少数派や移民、性的少数派等を重視する「アイデンティティ・ポリティックス」あるいは「ウォークリベラリズム」に傾き(換言すれば左傾化である)、本来の民主党の基盤である労働者階級が離反し、トランプが共和党側に取り込んだことがトランプの圧勝をもたらしたと言い、「彼ら(労働者)にとり、階級が人種や民族よりも重要だった」と指摘する。 今後の見通しについては、フクヤマはトランプに警戒的であり、今後の統治を楽観視していない。今回トランプは公約を強力に実施していくだろうと述べ、個人の自由尊重と政府介入の規制を基礎とする古典的リベラリズムにとってもトランプは脅威だと考える。 「我々が希望できるのは、残っている幾つかの制度的防波堤の維持だけだ。しかし状況は、改善する前に更に悪化することになるかもしれない」という最後の言葉が印象に残る。