学生人気が高い伊藤忠商事 大学院での稲の研究が、食糧部門での「やり抜く力」に
総合商社は就職先として学生から注目を集めていますが、その中でも伊藤忠商事は就職人気企業ランキングで1位に輝くなど、人気があります。狭き門をくぐりぬけた学生は、どのように内定を得たのでしょうか。2024年に入社した社員の就活体験を紹介します。(写真=伊藤忠商事食料カンパニー食糧部門油脂・カカオ部の田中梨紗さん。伊藤忠商事提供) 【写真】学生時代の田中さん(写真=本人提供)
食糧問題に関心を持ち、稲を研究
伊藤忠商事の2024年度の新卒採用は、総合職が約130人、事務職が約20人。文系のイメージが強い商社業界ですが、理系の採用も増やしています。24年に入社した田中梨紗さんは、名古屋大学農学部を卒業後、4年次に所属した研究室での研究を続けるため、同大学院生命農学研究科に進学しました。 「大学に入学したときは大学院に進むことは考えていませんでしたが、4年次の1年間の研究では満足できず、研究を続けた先にどんな結果があるのかを知りたくて、大学院に進むことにしました」 田中さんが取り組んでいた研究テーマは、「稲の生長と水位の関係」です。 「水位および酸素状態によって稲の茎がどのように変化するのかを調べました。この研究を通じて、昨今の異常気象で洪水などが起きたときにも生長できる稲を生成できる可能性があり、食糧危機の解決にもつながります」 農学部を志望したのも、食糧問題への関心からでした。 「中学生のとき、国連食糧農業機関で働く人のドキュメンタリー番組を見て、食が危機にさらされていることを知りました。その問題に立ち向かっていく人たちの姿を見て、私も何かに貢献したいと思いました」
研究と就活の両立で苦労も
田中さんの研究は自然が相手だったため、思い通りにいかないことも多く、植物に合わせた生活を送り、研究成果がなかなか出ずに苦労したことも多くありました。そうしたなかで身についたのが、「最後までやり抜く力」です。 「大学院1年の6月ごろからは、就活も始まりました。朝、キャンパスの田んぼ(圃場)に行って観測して、日中は就活のイベントなどに参加し、夕方に再び田んぼに戻って観測するという生活でした。定期的に研究の進捗報告会があり、そのための資料作りにも時間が必要でした。でも、就活と、研究と頭を切り替えることでリフレッシュにもなり、追い込まれずに乗り越える術も身につきました」 学生時代から好奇心が旺盛だった田中さんは、最初は志望する業界が決まっていたわけではありませんでした。「1つのことだけではなく、さまざまなことに関わること」「海外とつながれること」というのが志望先の条件で、企業説明会や就活支援などのイベントに参加するなかで、志望先を絞っていきました。 「総合商社は複数の業界にまたがるような仕事ができます。特に伊藤忠商事は新しいことにチャレンジしていく社風を感じられて、自分に合っていると思いました」