【体験談】浪人中に突然、適応障害に 自分を見つめ直して2浪後にたどり着いた道は
新設大学の1期生に
そんなときに息子が見つけたのが、2020年に開学予定だった情報経営イノベーション専門職大学(iU)でした。実務家教員による実践的な学びをベースに、文理融合系で情報学や経営学を学べるうえ、在学中に学生全員に起業体験をさせ、イノベーション人材を育成する大学です。既存の大学にはない新たなコンセプトと自由な学風があり、入学すれば、記念すべき第1期生です。本人がやる気を感じて受験を希望するのであれば、親としてはもはや賛成以外の意見はありませんでした。 息子はiUの秋のAO入試を受験することを決め、未経験の小論文対策の勉強を1カ月足らずでこなしました。そして、結果は無事合格。長かった浪人生活がようやく終わりを迎えました。 iU1期生として全国から集まった約230人は、かなりの個性派ぞろいでした。親の反対を押し切って入学してきた学生も多かったそうです。麻布高校や渋谷教育学園渋谷高校などの有名進学校出身者や、慶應義塾大学を退学して入学してきた学生もいるようでした。 優秀な学生が多いせいか、定期的に開催される起業体験型授業「イノベーションプロジェクト」の発表会では、レベルの高い発表が相次ぎ、毎回、審査員である実務家教員や起業家たちを唸(うな)らせるほどだったそうです。 イノベーティブで実践的な学びに明け暮れた大学生活を経て、「さらにプロトタイプ(試作品)実装に向けた研究をしたくなった」そうで、卒業後はそんな分野の研究ができる大学院への進学を希望。デジタルコンテンツマネジメント修士を取得できるデジタルハリウッド大学大学院(東京都千代田区)を受験し、合格しました。 修士1年の現在、デジタルコンテンツ制作や関連ビジネスに関わるさまざまな分野を授業で学びながら、生成AIをクリイティブに応用するラボに所属し、ノーコード開発やプロトタイプの実装に取り組んでいます。ラボの先生は、生成AI関連の会社を立ち上げたばかりの実業家で、リアルな起業家マインドも学べているようです。 息子の大学院までの道のりは、けっして正攻法のケースではないかもしれません。それでも、「いま学びたいことを学び、自分が一番来たかった場所にいる」と本人は言います。一見、不遇や失敗に見えたことも、自分らしい未来をたぐり寄せるために必要な経験だったのかもしれません。
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