ハリルがA代表入りへ見初めた3人は誰?
最後のひとりは、中国戦のスタメンに抜擢され、本来の右サイドバックではなく、不慣れな左サイドバックとして代表デビューを飾った米倉恒貴(ガンバ大阪)を挙げたい。 立ち上がりに何度か自身のサイドから攻め込まれ、スローインの流れだったとはいえ、左サイドを起点にされて先制点を奪われてしまったため、その後は攻撃を自重して守備に専念するという判断を下してもおかしくなかった。 ところが、米倉の気持ちが折れることはなかった。その後も中国のディフェンスラインの裏を狙って走り込んだ。その果敢なスプリントが同点ゴールを生み出すのだ。槙野智章のスルーパスを受けると、グラウンダーのクロスで武藤のゴールを演出した。 それだけではない。頼もしかったのは55分のシーンだ。森重真人が敵陣でチャレンジした直後、ボールがこぼれて中国にカウンターを浴びた瞬間、猛スピードで追走し、タックルを見舞ってカウンターの芽を摘んだのだ。 左サイドバックでの起用を告げられたのは、前日練習の直前だったという。 「“やったことあるか”と聞かれて、“ないです”と答えたんですけど、“行くぞ”という感じで。“相手の7番にしっかり対応してくれ”と言われて、攻撃では期待されていなかったと思うんですけど、何か違いを見せなければと思って。自分の売りはそこにあるので、とりあえず走ろうと思ってやりました」 プレーのクオリティとポリバレントな能力に加え、指揮官好みの「闘えるメンタリティ」も披露した。中国戦のプレーを見て、ハリルホジッチ監督が次は本職の右サイドバックとして起用してみたい、と思っても不思議はない。 この3人以外でも、倉田秋(ガンバ大阪)と藤田直之(サガン鳥栖)のパフォーマンスが印象に残っている。ふたりは韓国との2戦目に先発し、藤田は相手のトップ下をマンマークした上でセカンドボールを拾うというミッションを、倉田は左サイドの高い位置でボールをキープしてタメを作り、攻撃面で違いを生み出すというタスクを遂行した。この試合で山口が決めた同点ゴールをアシストしたのが倉田だった。 ただし、中国との3戦目に出番がなかったという点と、ふたりが務めたボランチとサイドハーフは、ハリルジャパンにおいて最激戦区であるという点で、次点とした。 いずれにしても、ハリルホジッチ監督は「真のA代表に入れる人材は何人か見つかった」と明言している。オーディションに合格した選手たちは確かにいるのだ。それが果たして誰なのか――。その答えは、9月のワールドカップ予選、カンボジアとアフガニスタンとの連戦で明らかになる。 (文責・飯尾篤史/スポーツライター)