《カメラを搭載した電車、情報収集する自動改札機》鉄道分野で蓄積されたビッグデータをAIで解析し、業務効率化を図る試み 人材確保に苦しむ日本の鉄道の救世主となるか
鉄道は、多くの人にとって交通の手段としてだけでなく、趣味や娯楽の対象としても親しまれており、ときに人々の知的好奇心を刺激してくれる。交通技術ライターの川辺謙一氏による連載「鉄道の科学」。第24回は「鉄道とAI」について。 【写真】JR大阪駅うめきた地下口で導入されている、顔認証できる自動改札機
* * * 近年は、AI(人工知能)が目覚ましい勢いで発達しています。みなさんの中には、ChatGPTなどのスマホアプリを通して、AIの機能が増え、判断の精度が徐々に上がってきたことを実感した人もいるでしょう。 こうしたAIを鉄道に活用する動きが、いま起きています。今回は、その理由を探ってみましょう。
なぜAIを鉄道に導入するのか
まず、結論から言います。AIを鉄道に活用する動きがあるのは、鉄道を支える業務を効率化するためです。つまり、AIを活用することで、従来人に頼っていた作業を自動化して、鉄道をより少ない人で支えられるようにしようとしているのです。 AIは、「ビッグデータ」とよばれる情報量が膨大なデータを処理できます。サンプルとなるデータを与えて学習させ、判断の精度を高めれば、「ビッグデータ」を短時間で処理し、必要な情報だけを取り出すことができます。 その点鉄道では、日々「ビッグデータ」が蓄積されています。毎日膨大な数の人(旅客)や物(貨物)を運んでいるので、それぞれの詳細な情報を収集すれば、それが「ビッグデータ」になります。 このため鉄道では、蓄積された「ビッグデータ」をAIで解析し、業務の効率化を図る試みがすでに実施されています。
たとえば大都市圏の鉄道では、AIを活用した輸送の効率化が検討されています。駅にある自動改札機で、各利用者の入場・出場した駅や時間、移動経路などの情報を収集し、それをAIで解析できれば、従来得られなかった利用状況に関する詳細な情報が得られ、列車の運行に反映できます。 また、近年は、車両にカメラを搭載する試みも行われています。カメラを使って前方の様子や、レールやまくらぎ、架線などの設備をカメラで撮影し、得られた映像をAIで解析できれば、異状(通常とは異なる状態)がある位置を特定でき、メンテナンスを担う作業員の負担が減ります。 これらが実現すれば、鉄道を支える業務が効率化されます。だから鉄道でのAI活用が検討されているのです。