《カメラを搭載した電車、情報収集する自動改札機》鉄道分野で蓄積されたビッグデータをAIで解析し、業務効率化を図る試み 人材確保に苦しむ日本の鉄道の救世主となるか
世界のトレンドになったAIの活用
鉄道におけるAIの活用は、すでに世界のトレンドとなっています。今年9月にドイツのベルリンで開催された「イノトランス(InnoTrans=国際鉄道技術専門見本市)」では、「AIモビリティラボ」と呼ばれる展示が初めて設けられ、AIの活用に関する講演やパネルディスカッションが行われました。 つまり、世界の鉄道業界では、AIが鉄道にイノベーションをもたらすツールとなると認知されたのです。 いっぽう、日本の鉄道業界も、この流れに乗ってAIの活用に取り組んでいます。たとえばJR東日本は、山手線を走る一部電車にレールや架線を撮影するカメラを搭載しています。 公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)も、この流れに乗り、研究開発を進めています。鉄道総研は、本年10月に東京都内で「鉄道総研講演会」を開催しました。タイトルは「鉄道の持続的発展を目指して―省人化と自動運転―」で、省人化の例として、AIを活用してメンテナンスにかかる人員を削減する技術や取り組みを発表しました。
日本の鉄道に必要なAI
鉄道におけるAIの活用をもっとも求めている国は、おそらく日本でしょう。なぜならば、鉄道の業務の効率化が急務である国だからです。 これから日本では、総人口だけでなく生産年齢人口(15?64歳)が急速に減少します。となれば、鉄道の利用者が減るだけでなく、鉄道を支える人材を確保しにくくなり、既存の鉄道の維持が難しくなります。 この危機を回避するには、AIを活用して、鉄道をより少ない人員で支えるしくみをつくらなくてはなりません。AIはもはや未来の技術ではなく、問題解決のツールとなろうとしているのです。 【プロフィール】 川辺謙一(かわべ・けんいち)/交通技術ライター。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。化学メーカーの工場・研究所勤務をへて独立。技術系出身の経歴と、絵や図を描く技能を生かし、高度化した技術を一般向けにわかりやすく翻訳・解説。著書多数。