<独占インタビュー>オリックスの2冠投手、金子が語るCSへの決意と投球極意
力まないという脱力の極意
――CSのような短期決戦の経験はほとんど初めてですね。レギュラーシーズンの登板とは違ってきますか? 「そこに向けて準備することは変わりません。ただ、気持ち的にはどうしても力が入ってしまう。気持ちが先走ってしまうでしょう。そこをどう抑えるか、そこですね。言ってしまえば、負けたら終わりの本当のトーナメント戦です。『もうこれだけやってきたんだから負けても仕方ない』と思うくらいに気持ちがふっきれていれば、いい結果が出るのではないかと思っています。そして、そういう気持ちになるために今までやってきたんです」 ――力まない。それこそが金子さんのピッチングスタイルですよね。 「でも投手というのは、絶対に力むんです。むしろ力んでいい。だから、僕は一回思い切って力むんです。その試合の第1球に、毎回、思い切り力んで投げます。力むと、たいていボールになりますが、それでいいんです。一度力むと逆に次からは力めなくなるんです。だから、その反動をうまく使いこなせればと」 ――そうだったんですか。その第1球目を注目しておきます。もしかすると、金子さんはマウンド上で、投げる前に背中を向け、ピョンピョンと飛び上がる“ルーティン作業”をされていますが、あれにも意味があるのですか? 「はい。飛び上がって、最後に、かかとからドンと降りるんです。力むということは上半身に力が入るということですから。ああやって、ジャンプして一気に降りることで意識は下半身にいきます。力みを消すひとつの手段。だから毎イニング、やっています」
27球で終わらせる究極のピッチング
ーー金子さんの求める究極のピッチングとは、どういうものですか? 「簡単に言えば、27球で終わることです」 ――一人1球で27人? 「はい。だから三振には興味はありません。球数を減らしたいんです。いかに少ない球数で投げ切ることができるか。とにかくリズムを考え、野手の守りの時間を短くしたいと考えています。守っている野手は、攻撃に集中するためにも、その時間は短い方がいいでしょう。これは、僕の推測なんですが、野手の方は、ピッチングを見ているだけの三振よりも、自分で打球を処理した方がリズムをつかみやすいんじゃないですか」 ――その話を聞いて、ひとつが合点のいく数値があります。「何でアウトをとったのか」という今季のピッチング内容のパーセンテージ調べると、去年と今年でゴロに打ち取った割合は、ほとんど変わりませんが(去年は34.6%で今年は35.0%)、三振の割合が35.5%から30.6%に減って、その分、フライのアウトが24.1%から28.9%へと増えています。 「そうなんですか? 僕的にはよろしくないデータですね(笑)。フライよりゴロなんです。フライはホームランになる可能性があります。一人で1点になりますが、ゴロならば極端に言えば、3人にヒットを打たれても満塁じゃないですか。それを考えるとフライよりゴロなんです。もちろん、状況に応じて、フライを打たせようと狙う球種もありますが、基本はフライや三振よりもゴロの山を築きたいんですよね」 ――となると、最後の最後に楽天の則本に5個差で持っていかれた奪三振王のタイトルも、そう悔しくはないのですか? 「これはずっと言っていることですが、タイトルを取るために野球はやっていません。1年間やった結果がそうなったということだけ。嬉しいのは、嬉しいですが、奪三振タイトルは別にいいかなと(笑)。僕の考え方やピッチングスタイルはそこではありません」