万博の目玉「人を乗せて空飛ぶクルマ」実現せず…審査間に合わずデモ飛行のみに
2025年大阪・関西万博を運営する日本国際博覧会協会(万博協会)は26日、万博で運航を予定する次世代の移動手段「空飛ぶクルマ」について、運航する4陣営の事業者全てが乗客を乗せないデモ飛行をすると発表した。商用運航が万博の目玉の一つとして期待されてきたが、機体の審査に時間がかかるなどし、全陣営が見送ることになった。
機体変更も
万博協会や政府、運航事業者などによる準備会議が東京都内で開かれ、各事業者が報告した。運航事業者には、日本航空、ANAホールディングス(HD)と米ジョビー・アビエーション、丸紅、新興企業のスカイドライブ(愛知県豊田市)の4陣営が選ばれている。 会議では、日航、丸紅、スカイドライブの3陣営が、大阪市内や兵庫県尼崎市内の離着陸場と会場内の2地点間を飛行し、ANAHDは会場周辺を飛行する運航内容が示された。全ての陣営が乗客を乗せないデモ飛行とし、運航期間は引き続き検討する。 日航は、運航事業者の権利を、住友商事と設立した合弁会社「ソラクル」(東京)に引き継ぎ、万博で運航する機体を、独ヴォロコプター製から米アーチャー・アビエーション製に変更することも報告した。
高いハードル
空飛ぶクルマは、万博で体験できる次世代技術の一つとして期待を集めてきた。 だが、乗客を乗せる商用運航実現のハードルは高かった。量産に必要な「型式証明」と、機体ごとに性能や安全性について国の承認を得る「耐空証明」を取得する必要があるが、審査には航空機やヘリと同様に膨大なデータの取得や提出が必要だからだ。 機体を自社開発するスカイドライブは6月に商用運航の断念を公表した。万博に向け型式証明の取得を目指してきたが、次第に技術的な課題や証明取得に向けた専門人材の不足が明らかになってきたという。福沢知浩CEO(最高経営責任者)は「(計画が)進むにつれて現実が見えてきた」と話す。 先行しているとされる海外勢も審査に時間を要している。日航やANAHDは独ヴォロコプター、米ジョビーの機体を使用する予定だったが、いずれも欧米当局の型式証明が取得できていない。両陣営はメーカーが欧米で証明を取得した後、日本での証明を得る方向で準備を進めてきたが、万博までの実現は難しいと判断した模様だ。