高齢者だけのものじゃない? 女性に多い「認知症」を取り巻く問題
「認知症なんて、80歳になってからかかるものだと思っていました」。これは今年7月、アルツハイマー病と診断されたことを明かした英国のアナウンサー、フィオナ・フィリップスの言葉。「でも、私は61歳という若さで認知症になりました」 ブレインフォグと不安に何ヶ月も苦しんだ末の診断には憤りを感じた。60代の女性の多くは、仕事や家庭、趣味などで忙しい。「だから私は(認知症を)気にかけず、いつも通りにしています」と『The Mirror』誌に対して語ったフィオナ。 「仕事をやめて暇を持て余したり、1日中テレビを観たりしたくはありません」 一般的にアルツハイマー病は他の種類の認知症と同じく晩年の病と考えられているため、その病が現役の中年女性を襲う可能性があると聞けば驚く。でも、認知症患者に関する最新の人口統計データを見る限り、そのようなケースは意外と多い。 現代の病の中でもとくに悲惨なアルツハイマー病は女性に多い。英国では患者の3人に2人が女性で、昨年は女性の最大の死因だった。その上、60歳以上の女性のアルツハイマー病の発症率は、この病とは比べものにならないくらい認知度とサポートが充実している乳がんの約2倍。 このあからさまな男女格差は、英国の認知症患者サポート団体Dimentia UKが「隠れた集団」と呼ぶ“若年性”認知症の患者の中にも見られる。認知症治療に関する学術誌『Journal of Dementia Care』掲載の論文によると、若年性認知症の患者数は7万800人(2022年9月)で、全認知症患者数の7.5%を占めている。 65歳以上(認知症がもっとも多い年齢層)の女性にとって、認知症の診断が大きなショックであることは言うまでもないけれど、それより早い段階で、苦労の末に手にしたキャリア、忙しい家庭生活、充実したソーシャルライフの記憶が消えていくと言われた人が受ける衝撃は、どれほどのものだろう。認知症の患者数は2030年までに94万4000人から100万人以上に急増するとされている。そのニュースが大々的に報じられる一方で、この病が女性に多いという重要な事実はあまり周知されていない。認知症で苦しむ女性に対する理解やサポートが一向に進まないのは一体なぜか? イギリス版ウィメンズヘルスから詳しくみていこう。