【池上彰氏に聞く】10億人が参加!盛り上がる「インド総選挙」...候補者名だけじゃなく『シンボル』を選んで投票!? 紅茶売りから上り詰めた『モディ首相』人気の秘密も解説
“ヒンドゥー教びいき”が批判の的にも
―――モディ首相は22歳のときにヒンドゥー至上主義団体(RSS)に参加し、現在も熱心な信者です。“ヒンドゥー教びいき”が宗教的少数派の批判の的にもなっているということで、全員が全員モディ首相が好きというわけでもないようですね? 「そうなんですよ。やっぱりインドはヒンドゥー教徒が圧倒的に多いので、この人たちに大変人気。結果的に支持率が高くなるということで、絶賛しているのはヒンドゥー教徒であって、それ以外の宗教の人たちは必ずしも支持していない実態があるんですよ」 ―――去年インドで開催されたG20のときに話題になりましたが、自国インドのことを「バーラト」(ヒンディー語で「インド」の意味)と呼びましたね? 「これを突然言ったものですから、これから国の名前を変えるのかと騒ぎになりました。インドって広いからヒンディー語が話せない人たちもいるわけですよ。いろんな言葉があるので共通語が英語になっていたりする。ヒンディー語を話すヒンドゥー教徒にとっては熱烈に支持しますけど、それ以外の人にとってはちょっとねというところは、実はあるんですよ」 ―――宗教割合を見てみると、79.8%がヒンドゥー教ですが、イスラム教が14.2%など他の宗教を信じる人もいます。さきほどの「バーラト」という発言などは、ヒンドゥー教以外の人たちはどう捉えるのでしょうか? 「これはちょっと…という思いがあるかと。ヒンドゥー至上主義だからヒンドゥー教徒のためにいろいろやりますよとなると、他の宗教にとってはどうかなとなってきます。イスラム教徒は14.2%と少数派に見えますけど、実数は2億人います」
“カレー本場の国”で日本のカレー店が人気!?
―――では、人口14億人のビッグな市場を求めて日本企業はどういう動きをしているのでしょうか。一般的にインドでのビジネスは言語・宗教・企業文化の違いから難易度が高いと言われています。そんな中、うまくいっている日本企業もあるんですね? 「大成功している企業があるんですよ。とにかくインド国民の気持ちに刺さったというインド国内シェアNo.1の日本メーカーがあるんです。それが自動車のスズキですね。2022年度の販売台数389万台のうちスズキ車が160万台、41.3%はスズキ車というわけです。スズキはかなり早い段階から地元の企業と合弁企業をつくって、それでどんどん発展させました。また、スズキはインドのことをよく研究しているんですね。要するにデザインが良かったんです。過去には日本の別のメーカーが安さを売りに進出しようとしたんですけど、デザインが受け入れられなくて失敗してしまった。その点、スズキはいち早くインドに進出。やはり向こうの大手のところと一緒になりますと、インドの人たちの気持ちがわかるので、こうしたらいいよっていう形になったということですね。インドはやっぱり小型車なんですよね。道路事情は決して良くないので、かなり混雑しているところでは大型車が駄目なんですね。スズキってやっぱり小型車ですから非常にうまくいったということです」 ―――自動車評論家の国沢光宏さんによりますと、トヨタもインド進出はしたようですが、明らかなコストカットが目立ち、インドの人たちはあまり好まなかったという事例があったようです。 「安さだけでは駄目だということですね。これから豊かになろうという人たちも大勢いらっしゃるわけですから、そうするとちょっと背伸びをした車がほしいよというところがあるわけですよ」