自分の手で“佐藤優樹”を作るまで。モーニング娘。卒業後「音楽を聴けなくなった」あのころを経て
佐藤優樹が、さらなる進化を遂げている。11月6日に発売された2ndシングル『嵐のナンバー/花鳥風月 春夏秋冬』の、彼女の歌声を聴いた率直な所感だ。 【画像】ファンを公言するアイドル同業者も多い、元モーニング娘。佐藤優樹 2011年に12歳でモーニング娘。へ10期メンバーとして加入した当初、歌・ダンスがほぼ未経験だった佐藤は、2021年の卒業まで、驚くべき伸び率で歌声とパフォーマンスを成長させていった。ファンを魅了するだけでなく、後輩たちに“目標”とされるまでになったその圧倒的な表現力、唯一無二の存在感を「天才的」と評す声も少なくない。 しかし10年間のグループ活動を終え、約2年の充電期間を経たあと、ソリストとしての道を歩む現在の彼女は「今回の曲でやっとスタートラインに立てた」と語る。ひとりのアーティストとして、自分自身の表現を更新し続ける決心に至った道のりについて語ってもらった。
自分で“佐藤優樹”を作らなきゃいけない
──2ndシングルの収録曲は、モーニング娘。に所属されていたときと歌い方や表現が全然違っていて、新鮮に感じました。2023年にリリースされた1stシングル『Ding Dong/ロマンティックなんてガラじゃない』の際は、曲と向き合える状態になるまで時間がかかったと聞きましたが、今回はいかがでしたか? 佐藤優樹(以下、佐藤) 前回は、ソロとして初めて出す曲で、右も左もわからなかったので、会社の信頼できる人たちにお任せして、優樹はついていこう!という気持ちだったんです。でも、2ndを発売することが決まったとき、今回からは自分で“佐藤優樹”を作らなきゃいけないって思って。 ──前回の経験を経て、そう思われたんですか? 佐藤 そうなんです。思い知らされました。会社の人たちに納得しなかったわけじゃなくて、会社の人たちと私が一緒になって“佐藤優樹”を作らなきゃいけないって。だから、ちゃんと自分と向き合おうと思いました。 ──「“佐藤優樹”を作らなきゃ」と考えたとき、どんな像を思い描いていたんですか? 佐藤 なんていうんでしょう……そのときは、逃げない人って思ってました。逃げ癖がついちゃってたので、マネージャーさんにも「私が逃げそうになったときは止めてください」って言ってるくらいで。逃げないで挑戦するからこそ自分のやりたいことが広がるんだって信じて、今回の曲でやっとスタートラインに立てた気がします。 佐藤 「嵐のナンバー」と「花鳥風月 春夏秋冬」は私の歌声だったり、これからのことを考えて、会社の人たちが「これはどう?」って提案してくれたものから決めたんですけど、アディショナルトラックの「Sorry!」と「とどめ」は自分で曲を決めるっていうことを初めてやらせていただいて。何十曲も聴いた中から絞りました。 ──どんな理由で、この曲に決められたんですか? 佐藤 さっきも話したみたいに、今回は自分が今まで逃れてきたことに挑戦しよう、逃げないっていうテーマだったんです。 ──逃げない、ですか。 佐藤 たとえばラップを歌うのはモーニング娘。時代のころから苦手で、ちょっとラップのリズムが恥ずかしくなっちゃうんですよね。モーニング娘。なら石田亜佑美ちゃんとか、リズムそのものを楽しんでいて、すごく堂々と歌うんです。私は恥ずかしがるから、ディレクターさんが「やめとこうか」って言うくらい。自分からも無理です、ラップやりたくないですって言ってたんですけど、それじゃダメだと思って、「とどめ」で挑戦しました。 ──「Sorry!」も、かわいらしさ全開の表現で新鮮だったのですが、これも「逃げない」の一環なんですね。 佐藤 かわいい系の曲がどうしても苦手で、自分でやると気持ち悪いって思っちゃうんです。でも、これから、かわいい系の曲も歌いこなさなきゃいけない場面がくるかもしれないと思って、この曲に決めました。 ──ラップも、かわいいも、いろんなジャンルを歌えるようになっておきたかったんですね。 佐藤 そういう表現が全部集まっていたのが、田中れいなさん、飯窪春菜ちゃん、石田亜佑美ちゃんの「私のでっかい花」という曲で。石田亜佑美ちゃんのラップと、かわいいが得意な飯窪春菜ちゃんと、なんでも歌いこなす田中さんの3人だからこそ歌えた曲で、今年の5月のイベントで歌ってみたんです。そこで、はっきりと「ああ、こういうのが苦手だな」ってわかりました。みなさんの前で歌って申し訳ないですけど(笑)。だから、アディショナルの曲の方向性がなかなかまとまらなかったり、レコーディングにも時間がかかったりして、かなり苦戦しちゃいました。 ──新曲はどんなところに苦戦しましたか? 佐藤 私って、キンキン声なんです。でも、「嵐のナンバー」は低音を響かせる歌い方をしなきゃいけないのに音数が少なくて、時間がかかりました。「花鳥風月 春夏秋冬」は、計4回くらいレコーディングをしたと思います。サビを地声にする練習をして、あとヴィンテージエレキギターみたいな声を出してほしいって言われて、「それは風邪をひいたときにしか出ない声!」って思ったんですけど、ほんとにたまたま風邪をひいたんです(笑)。すぐにマネージャーさんに「今、レコーディングしたいです」って連絡しました。 ──そんな奇跡が起こるんですね(笑)。 佐藤 「とどめ」はリズムの取り方が難しかったです。モーニング娘。にいたときは「常に16ビートを刻む」ことを意識するように言われていたのですが、ソロになってからは「ずっと16ビートじゃなくていい」と言われて、気にしすぎたのか16ビートで歌えなくなっちゃって。でも、「とどめ」は16ビートを感じさせながら歌いきらなきゃいけないから、取り戻すのに必死でした。「Sorry!」は飛び跳ねるみたいなかわいい声を歌うのとラップもあるので、そこが難しかったです。