「政治資金規正法はザル法だ!」 裏金受け取った議員の立件には高いハードルも 法律の問題点とは? 元東京地検特捜部検事・郷原信郎弁護士が捜査のポイントを詳しく解説
自民党のパーティー収入をめぐる裏金疑惑で19日、安倍派・二階派に強制捜査が入りました。 自民党の主要2派閥が強制捜査を受けるという極めて異例の事態に発展した裏金疑惑。 両派の会計責任者は東京地検特捜部の任意聴取に対し不記載について認めているということです。 捜査のメスはどこまで届くのでしょうか。元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎(ごうはら・のぶお)さんに今後の捜査などについて聞きます。
法律の趣旨には反しているのに・・・ 議員を立件するためには高いハードル
政治資金規正法では、政治資金収支報告書の提出義務は会計責任者にあると定められています。ただ、共謀が成立すると判断されれば会計責任者以外も罪に問われます。 (Q.議員が立件される可能性はどのように考えますか?) ーー私はかなり難しいと思っています。 議員個人は政党支部とか資金管理団体とかいろんな政治団体を持っています。収支報告書は、それぞれに記載義務があります。 しかし、裏金として受け取った以上、それをどの団体に入れるかというのをそもそも考えていないわけです。そうすると、どの団体の収支報告書に書かなかったのか、あるいは虚偽の記載をしたのかという事実が特定できません。この点が、政治家個人を政治資金規正法違反で立件するための非常に大きなハードルになっています。 法律の趣旨には著しく反する行為ですが、これを処罰しにくいというのが政治資金規正法の“ザル法”たる所以です。
(Q.共謀が成立するためにはどんな証拠が必要になってくるでしょうか) ーーまず、どこの団体に入れるつもりだったということを会計責任者が自白することが前提となります。そのうえで、会計責任者が議員個人と何か相談をしたなどの事実が出てきて、議員がそれを認めると共謀まで認められる可能性もあります。 しかし議員にとっては、それで起訴されれば公民権停止となって失職となるわけですから、議員からそうした供述を得るのはハードルが高いといえます。 (Q.今回は『派閥から記載しなくてよいと指示があった』との話も出ています。そうしたなかで、派閥の事務総長の立件についてはどうお考えですか) ーー国会議員である事務総長が、会計責任者に対して具体的に指示をして、この裏金づくりの手法を自主的に意思決定をしていたという事実が出てくると、共謀ということで事務総長の責任を問う余地もあると思います。 しかし、事務総長の上にさらに会長がいたわけです。会長が自主的に決定してたということになると、中間的な位置づけの事務総長は、単に報告を受けていただけで自主的な意思決定には関わっていなかったということで、こちらの立件もかなりハードルが高いと考えます。 会長を務めていた細田博之氏、安倍晋三氏はすでに亡くなっています。
【関連記事】
- 【解説】木原コメンテーター「誰が税金を払う気になる?」 どうなる!?岸田政権 政界に吹き荒れる”派閥の裏金疑惑” 閣僚や党役員から安倍派を一掃
- 自民党に激震! 岸田総理が政治資金パーティー自粛を要請したが・・・ 券が売れなければ議員は冷遇? 元衆院議員の金子恵美さんが“裏金問題”をやさしく解説
- 「時期尚早」「責任の所在明確に」 万博期間に“ライドシェア”めざす吉村知事らにタクシー業界から厳しい指摘続々
- 財務省の公文書改ざん巡る佐川元理財局長への損害賠償訴訟 自殺した赤木俊夫さんの妻の控訴棄却 大阪高裁「法的義務を課すことは困難」
- 国際ロマンス詐欺の被害回復うたい"名義貸し" 「非弁行為」の弁護士に懲戒請求 広告会社に業務委託し着手金9億円受け取る