2024年の森保ジャパンは「15試合50得点」 圧倒的な結果をもたらした“3つのターニングポイント”とは
練習とミーティングの価値
そうした前例があるだけに、ホームとはいえ初戦は簡単な試合にはならないという予想があった。ところが蓋を開けてみると日本の一方的な試合となり、中国のシュートは前半の1本のみ。ほとんどの時間を中国サイドで展開するワンサイドゲームから、大量7点を奪って圧勝した。 そしてその勝因を山本昌邦NTD(ナショナルチームダイレクター)は10月のサウジアラビア戦とオーストラリア戦を前に「普段バラバラに練習していたが、代表では1回の練習とミーティングがとても大きな意味を持ちます。9月では試合までに各3日間あった」と練習日を確保できたことを挙げていた。 このあたりをもう少し具体的に森保監督はサッカー専門誌のweb版のインタビューで説明しているので紹介しよう。 「前回オマーンに敗れた初戦、今回は中国戦がとにかく本当に大きかった。カタール(W杯予選)の前は選手、スタッフも同じ絵を持てないまま試合前日にヨーロッパから全員が集合し、戦術的なミーティングでもイメージを共有できずに試合に入ってしまいました。あの時はそれでもベストだと思って準備しましたが、共通の絵がなかった点が敗因のひとつです」と、それまでと同じような準備であっても根本的には急場しのぎであったことを認めた(註)。
チャーター便の大きなメリット
そして中国戦に関しては「今回はチャーター便を協会に手配してもらい、(9月)3日、4日と2日間の準備ができた。たかが1日練習が増えただけじゃないかと思われるかもしれませんね。でもたかが1日、されど1日。2日前から戦術的な練習とミーティングができ、はかり知れない良い準備ができました」とその成果を明かした。 シリア戦からは3ヶ月が経っていて、中国戦ではスタメンが4人ほど変わっている。戦術的な理由に加え、ケガ人や選手個々のコンディションなどからチームの状況も絶えず変化する。このため準備の時間は監督、選手とも多ければ多いほど情報を共有できるメリットがある。 この中国戦とアウェーのバーレーン戦で連勝を飾ったことで、日本はサウジアラビア戦後もチャーター機を利用して帰国し、ホームでのオーストラリア戦に備えた。日本に“海外組”が増えた現状で、練習とミーティングの時間を確保することの重要性とその効果を実感できたのが中国戦であり、これは今回の予選にとどまらず、今後の日本代表と他のカテゴリーの日本代表にとっても有益な財産になることだろう。 註:サッカーダイジェストWEB:11月26日配信 六川亨(ろくかわ・とおる) 1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。 デイリー新潮編集部
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