2024年の森保ジャパンは「15試合50得点」 圧倒的な結果をもたらした“3つのターニングポイント”とは
踏襲された“自己責任”のルール
ところがシリア戦では同じ3-4-3でも堂安を『4』の右ウイングバックにコンバートし、『3』の右に久保建英を起用した。堂安は攻撃力が魅力の選手であり、カタールW杯初戦のドイツ戦でも交代出場から同点ゴールを決めている。そんな彼に森保監督は守備のタスクも課したのである。そして堂安はカットインから2点目を奪うなど、攻守にわたり指揮官の起用に応えた。 日本の主力選手は、いわゆる“海外組”である。ヨーロッパでプレーしていれば、ボールを失ったら自己責任で回収する努力が求められる。同時に、DF陣が攻撃参加するのが当り前のように、前線の選手も守備に加わるのは当然だ。そうした“常識”をこのシリア戦で森保監督は踏襲した。 W杯アジア3次(最終)予選でも日本の基本システムは変わらず、中国戦のウイングバックは右に堂安、左に負傷から復帰した三笘薫が務め、堂安は前田大然と、三笘は同じく代表復帰の伊東純也と交代し、左右のポジションを入れ替えてプレーした。 この基本スタイルはその後も変わらず、バーレーン戦とサウジアラビア戦は堂安のスタメンから伊東、三笘から中村への交代で、インドネシア戦は堂安から菅原、三笘から伊東、中国戦は伊東から橋岡大樹、中村から三笘への交代に変わったものの与えられたタスクに変わりはなかった。
不安視されていた中国戦
そして4-2-3-1もしくは4-3-3から3-4-3へのシステム変更は、対戦相手のカウンター封じにも有効だった。 ボールをロストしたら『4』の両ウイングバックと『3』の両アウトサイドの2人がかりで相手の攻撃の起点を潰しにかかれるからである。アジアカップの時とは違い、囲い込んでボールを奪い返したり、三笘などは反則でドリブルをストップしたりしていた。回数が少ないためあまり目立たなかったが、アジアカップとの大きな違いである。 最後に転機となった試合として、3次予選の初戦、9月5日に埼玉スタジアムで開催された中国戦を取り上げたい。この試合は日本が7-0と圧倒したが、対戦前は不安を煽る報道も少なからずあった。 なぜなら森保監督は前回カタール大会の3次予選はホームの初戦でオマーンに0-1と敗れていたし、第3戦のアウェー・サウジアラビア戦も0-1で敗れて1勝2敗のスタートだったからだ。一時は解任の噂すらあった。さらにヴァイッド・ハリルホジッチ前監督時代、16年9月のロシアW杯3次予選初戦のUAE戦も1-2で敗れていた。いずれも日本代表の聖地とされる埼玉スタジアムだった。