サッカー専門学校に突撃!ともにボールを蹴る元日本代表の森島氏
CITY FOOTBALL ACADEMYは、学校法人栃木シティ学園が2023年4月に栃木県栃木市に開校したサッカーの専門学校だ。日本フットボールリーグ(JFL)に所属する栃木シティフットボールクラブ、日本フットサルリーグ(Fリーグ)1部のしながわシティフットサルクラブの育成組織でもある。各学科とも2年制で、プロフットボール学科、フットボールビジネス学科、マネージャー/ホペイロ学科に約50人の学生が在籍し、サッカー界やフットサル界での活躍を胸に秘め、就学と練習に励む日々だ。 【フォトギャラリー】CITY FOOTBALL ACADEMYプロフットボール学科 プロフットボール学科は3学科の中では唯一、男子だけで構成され、基本的に学生の多くがサッカーかフットサルでのプロ選手を目指している。サッカーに特化した専門学校だけに、校内と練習場の付帯設備は抜群で、指導陣も専門分野で経験豊富な陣容が勢ぞろい。プロになるための必要不可欠な要素を身に付けるには、うってつけの環境といえる。 直井規男学科長は栃木県内の中学校で保健体育科教師を長らく務めたほか、栃木県サッカー協会では中学生年代を統括する第3種委員長や県協会理事も歴任。日本サッカー協会公認の指導者資格A級ジェネラルも取得している。さらに指導者養成の講習会、研修会で講師を務めるチューター(旧インストラクター)も日本サッカー協会公認の47FAチューターの資格を持ち、授業内で実施する講習会に参加すれば、指導者資格C級コーチを取得できるアドバンテージがある。 チューター資格は、栃木県サッカー協会技術委員長を務めたフットボールビジネス学科の菅谷昌広学科長も有しており、こういった教員や指導者を抱えるのも学園の大きな強みだ。 「うちが最も恵まれているのは、目の前に栃木シティというプロクラブがあることです。ホームゲームには“実習”として毎回全員が参加し、ボールパーソンを担うこともあります。トップチームの選手と触れ合う機会も多く、環境面は申し分ない。だからこそここで成長し栃木シティへ昇格してからも、活躍できる選手をひとりでも多く輩出することがわれわれの使命でもあります」 直井学科長は目を輝かせながら、こう抱負を口にした。 プロフットボール学科は全員がプロ選手を目標にしているわけではない。一期生の吉原健太郎さん(2年)の夢は、プロサッカークラブの分析(アナリスト)担当に就くことだ。 静岡県出身のMF吉原さんは強豪の常葉橘高校で活躍し、プロを目指して九州産業大学に推薦入学。ここで才野倭ヘッドコーチ(現セレッソ大阪分析コーチ)と出会い、分析や指導に興味を抱くようになった。「頑張ればプロも夢ではないと思いましたが、8月頃に“分析を学びたいなら一人前に育てます”という橋谷さんのSNSを見た瞬間、これだと思って大学を辞め、ここに入学することを決めました」と説明する。 橋谷さんとは、栃木シティの橋谷英志郎インディビジュアルアナリストのことで、プロフットボール学科で授業を受け持っている。 吉原さんは今年1月から栃木シティに帯同し、試合のビデオ撮影などを担当。今後は「栃木シティと契約してもらえるよう監督さんが求めるタスクをこなし、来季は即戦力になりたい」と青写真を描く。 学校生活については「自分のやる気次第で可能性が広がる環境がここにはある。学校には感謝しかないので、10月の全国専門学校選手権で優勝し知名度を上げたい」と学園への貢献を誓い、「最終的には地元の清水エスパルスで分析担当になりたいですね」と人生設計図を披露した。 昨年の全国大会は初出場ながら16チーム中、4位に入る大健闘。1回戦は前年の3位を2-1で下し、準々決勝では前年2位とPK戦まで競り合い、15-14で制した。準決勝は延長戦まで粘ったが惜敗し、3位決定戦は後半追加タイムに同点にしたものの、惜しくもPK戦で屈した。 それでも当時指揮を執った直井学科長は、「準決勝はロスタイムに追い付かれて延長で力尽きたが、けが人が大勢いるのに最後まで戦ってくれた。感激しました」と目を細める。 栃木シティOBで元日本代表FWの森島康仁外部講師は、「私も大会を観戦しました。ベスト4はすごいことだが、彼らはとても悔しい思いをしたはずなので、それはいいことですよね」と悔しさをバネにしてほしいと述べる。学生との接し方については「僕があまり言い過ぎてもいけませんが、プロ経験者の自分が要所でアドバイスするだけでも違うと思う。選手目線でコミュニケーションを取っています」と、実技練習では一緒にボールを蹴っている。 練習場は栃木シティのホームスタジアム近くにあり、人工芝ピッチのほかフットサルコート3面にクラブハウスやメディカル室、用具室を併設。木曜日はしながわシティの松田大次郎ヘッドコーチが、フットサルの指導を行っている。 (文・写真=河野正)