日米金融政策の観測が交錯する年明け後の為替市場
非製造業の景況感は下振れ
ところが、雇用統計の直後に発表された12月米ISM非製造業指数は予想外の大幅低下となり、雇用時計を受けて浮上した景気の楽観的な見方は再び修正されたのである。指数全体は前月比2.1ポイント低下の50.6となり、また雇用の指数は7.4ポイント低下し、43.3と2020年7月以来の低水準に達した。1月3日に発表された12月のISM製造業総合景況指数が14か月連続で50未満の縮小圏に留まったことと合わせ、米国経済の先行きに不安を生じさせた。 12月米ISM非製造業指数を受けて、再びFRBの利下げ観測が強まり、ドル円レートは1ドル143円台までドル安円高に振れた。
地震が金融政策に与える影響は小さい
一方日本では、1月1日に発生した能登半島地震が日本経済に与える影響について懸念が生じ、それが日本銀行のマイナス金利政策解除の時期を遅らせるなどの観測を金融市場で生じさせた。年初来のドル高円安の流れは主に米国の金融政策の見通しの修正によって生じたものであるが、一部はこうした日本側の要因によるだろう。 ただし実際のところは、能登半島地震が日本経済に与える影響はそれほど大きなものではなく(コラム「能登半島地震による経済損失について考える」、2024年1月5日)、そのため、日本銀行の金融政策に与える影響も小さいと考えられる。 金融市場では、地震の影響で日本銀行が1月の次回金融政策決定会合でのマイナス金利政策解除を先送りすることを余儀なくされるとの見方もあるが、そもそも地震とは関係なく、1月の会合でマイナス金利政策が解除される可能性は低いと考えられる(コラム「1月政策修正観測を冷やした日銀総裁記者会見:チャレンジング・ショックは終息:FRB利下げ前に動くのは不適切:政治混乱は政策の自由度を高める」、2023年12月19日)。
日本銀行のマイナス金利政策解除の時期は後ずれへ
日本銀行がマイナス金利政策を解除する時期は、最短では今年4月の会合だろう。3月中旬に春闘での主要企業の賃上げを確認したうえで、展望レポートで新たに2026年度を含む物価見通しを示すことができるのが、この4月の会合であるからだ。 しかし筆者は、マイナス金利政策解除の時期はさらに先送りされる可能性を見ており、2024年10月の決定会合でのマイナス金利政策解除を現時点でのメインシナリオと考えている。 春闘での賃上げが、2%の物価目標達成を実現するほどの水準に達しないこと、金融市場が3月のFOMCでの利下げを半分程度の確率で織り込む中、FRBが利下げに動く際、あるいはそうした期待が市場で高まる際には、日本銀行は円高リスクに配慮してマイナス金利政策解除には動けないと考えられることが理由である。 日本銀行は、FRBの利下げが一巡するのを待ってからマイナス金利政策解除に動くのではないか。現在、FOMC内で予想されているのは、2024年中に3回程度の利下げである。その場合には、日本銀行は今年10月の会合でマイナス金利政策解除に動くことが可能となる。他方、金融市場は2024年中に6回程度の利下げを予想しているが、その場合には、利下げ観測は年内いっぱい続き、日本銀行のマイナス金利政策解除は2025年に先送りされるだろう。