日米金融政策の観測が交錯する年明け後の為替市場
年明け後の為替市場はドル高円安の流れに
年明け後の為替市場は、日米の金融政策に関する観測が交錯する中、比較的大きく変動した。ドル円レートは1月2日のオセアニア市場で、1ドル140円台で始まった後にドル高円安の流れが徐々に強まり、1月5日の米国12月分雇用統計発表後には1ドル146円直前までドル高円安が進んだ。 年明け後のドル高円安の流れを形作ったのは、2024年の米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げについて、慎重な見方が浮上したことだ。また、それを後押ししたのは、1月4日にFRBが発表した昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨だ。 そこでは、政策金利はピークにある可能性が高く、2024年中に利下げが開始されるとの認識が示される一方、景気抑制的な政策スタンスを「当面」維持するのが適切、との見解で一致したことが確認された。 他方で、追加利上げの可能性はなお排除されていない中、数人のFOMC参加者は、現在想定されているよりも長く政策金利を据え置く可能性がある、と指摘している。「利下げを議論した」と発言した昨年12月のFOMC後の記者会見でのパウエル議長の発言を受けて、金融市場は2024年に6回程度の利下げを織り込んだ。しかし、この議事要旨の内容は、市場の利下げ観測を幾分後退させ、ドル高円安の流れを形作ったのである。
雇用者数は事前予想を上回るが雇用統計はミックスの内容
利下げ観測をさらに後退させることになったのは、1月5日に公表された米国12月分雇用統計だ。それは、米国の労働市場がなお良好であることを示唆するものとなった。 失業率は3.7%で前月比横ばいのなか、非農業部門雇用者数は前月比21.6万人増となり、事前予想の平均値17.5万人増を大きく上回った。医療、政府、建設、娯楽・ホスピタリティなどで雇用の増加が目立った。他方で、時間当たり賃金は前月比+0.4%と、事前予想の同+0.3%を上回った。 しかし、この統計の中には雇用情勢の悪化を示唆する指標も多くみられており、労働市場が徐々に冷えこんでいることも確認されたと言えるだろう。労働参加率(生産年齢人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合)は0.3ポイント低下の62.5%と、実に約3年ぶりの大幅低下となった。同参加率は、比較的若い世代と中高年齢層で特に下げた。また失業者が仕事を探す期間は長期化し、家計調査に基づく雇用者数は前月比68.3万人減と2020年4月以来の大幅減少となった。