【本城雅人コラム】1番人気で5着のレガレイラが、Vのスタニングローズの薔薇一族にいた”忘れられない”1頭と重なった
◇中央競馬コラム「ぱかぱか日和」 ◇10日 「第49回エリザベス女王杯」(G1・京都・芝2200メートル) 京都の外回りは下り坂から4コーナーに入り、そのコーナーはほんのわずかだがバンクがついている―。武豊騎手から聞いた京都競馬場の特徴の1つである。だから下り坂で勢いをつけるのは武器になるが、遠心力で大回りしない技術が求められる。日本人でも難しい難関コースを、クリスチャン・デムーロが見事にやり遂げ、スタニングローズを2年ぶりのG1制覇に導いた。フランスのロンシャン競馬場も、坂を下ってコーナーを回る。ヨーロッパを主戦にしているジョッキーはこうした勾配のあるコースが抜群にうまい。つねに大自然を生かした競馬場で戦っているからだろう。 スタニングローズは薔薇(ばら)一族出身。祖母のローズバドはエリザベス女王杯に3回挑戦して2、8、5着で、秋華賞も2着。その母ロゼカラーもエリザベス女王杯は13着、一族悲願だった牝馬G1を2勝したことになるが(牡馬はローズバドの子ローズキングダムがジャパンCなどG1を2勝)、私にはこの一族の1頭が、1番人気で5着に敗れたレガレイラと重なった。 ロゼカラーの子にローズプレステージという牡馬がいた。薔薇一族の多くを育てた橋口厩舎所属で、京都新聞杯で2着に入り、日本ダービーに登録したが、除外。古馬に混じって目黒記念に出走した。49キロの軽ハンデだったが11着に敗れ、その後は未勝利に終わった。 そのことを名伯楽の橋口さんが「目黒記念は無理をさせてしまったなぁ」と悔やんでいたことが忘れられない。3歳と古馬、牡馬と牝馬に斤量差があるように、そこには人知では測れない壁があるのではないか。 2歳暮れの評価は最高位級で、牡馬相手の皐月賞、日本ダービーに挑戦したレガレイラ。2走とも上がり最速を記録したのだから選択は間違っていなかったと思う。だがメンタル面はどうか。自信を失っていないだろうか。今後の牝馬の挑戦を躊躇(ちゅうちょ)させないためにも、ノーザンファームと木村調教師の名コンビには、最強牝馬の立ち直りを期待したい。(作家)
中日スポーツ