山梨県の水素戦略 利用、製造、貯蔵で最先端技術 サントリー工場に水電解装置
山梨県が3月、県内の水素関連施設を巡るプレスツアーを実施した。同県の最新の取り組みを現地から報告する。 ■サントリー白州工場に大型水電解装置 山梨県が温室効果ガス(GHG)を排出しない「水素エネルギー」を柱とした産業振興政策を推し進めている。県内に水素エネルギーを研究・開発する施設を集約、山梨発で日本の水素社会への転換を促す考えだ。 水素エネルギーは、大きく二つの活用方法がある。①水素と酸素を化学反応させて、電気を作る「燃料電池」、②水素を燃やして熱エネルギーを得る「水素燃料ボイラー」だ。いずれも、生成物は水なので、GHGの排出はゼロだ。一方、この二つの装置に使う水素は、電気を使って水を水素と酸素に分解する「水電解装置」で得ることができる。 山に囲まれ、南アルプスの伏流水などの水資源が豊富な山梨県は、元々、水力発電が盛んだ。また、日本一、日照時間が長く、太陽光発電の条件にも恵まれている。県企業局の中澤宏樹・参与によると、山梨県の再生可能エネルギーの最大発電量は109万キロワットに対し、県内の平均電力需要は57万キロワット。差し引き52万キロワットの余剰再エネで水素を作れば、山梨県独自のエネルギー源を持つことができる。 ■県内経済基盤を強靭化 この水素を①使う、②作る、③貯蔵するの3分野で世界最先端の技術を開発・実装し、「県内の経済基盤を強靭(きょうじん)化する」(長崎幸太郎知事)のが、山梨県の狙いだ。 県内には、大きく三つの研究開発施設がある。①山梨大学の水素・燃料電池ナノ材料研究センター(甲府市)、②県企業局米倉山電力貯蔵技術研究サイト(甲府市)、③米倉山次世代エネルギーシステム研究開発ビレッジ(Nesrad、甲府市)──だ。 山梨大学は石油ショックを機に、1978年から燃料電池の研究を開始した世界でも最大、最高水準の水素エネルギーの研究機関だ。同大の水素・燃料電池ナノ材料研究センターでは88人(事務職員含む)が、燃料電池や水電解装置に使われる材料の研究開発や試作、評価に携わっている。