“孤独”な時間を楽しみすぎると“人嫌い”になる?日本一有名な精神科医が教える“一人時間の楽しみ方”
脳にも休息が必要
――ある程度の孤独が必要なことは分かりましたが、一人時間を楽しみすぎると、人と一緒にいるのが億劫になってしまいそうです。 「人の時間を適度に持つことは大切ですが、それが行き過ぎて引きこもりの状態になってしまうと、精神的な健康を害することにもなりかねないので、注意が必要です。 基本的に、人間の遺伝子は原始時代からほとんど変わっていません。原始時代の人々は、今のように多くの人や情報が溢れる環境ではなく、限られた状況で生活していました。しかし、現代社会は情報過多で人も多すぎて、脳にとって刺激が過剰です。人と一緒にいることと、孤独とのバランスをとることが重要だと思います」 ――孤独を理由に精神科を訪れる方は多いのでしょうか? 「孤独に悩む方は多いですが、孤独そのものに診断名がつくわけではありません。しかし、多くの精神疾患の背景に孤独が影響しているケースは少なくありません。例えば、うつ病やアルコール依存症、パニック障害などに悩む患者さんの中には、孤独がその一因となっていることがよくあります。これらの治療の一環として、孤独を解消する取り組みをすることもあります。 意外に思われるかもしれませんが、通院自体が孤独の解消につながることもあります。精神科に定期的に通うことで、普段の生活や職場とは異なる価値観に触れ、人と会話をする機会が生まれます。これが心の変化や環境の改善を促し、結果的に生活が前向きになるケースも多いのです。 人が変わるきっかけは、些細なことから始まることが多いです。例えば、自炊ができるようになったり、部屋を片付けられるようになったりするだけで、生活全体が少しずつ良い方向に進むことがあります。一見すると孤独の解消とは無関係に思える行動が、最終的には大きな変化をもたらすことがあるのです」 ――精神科に行くことはハードルが高いと感じる人もいると思いますが、うつなどの重大な症状ではない場合でも、行って大丈夫でしょうか? 「もちろん大丈夫ですが、孤独が主な悩みであれば、必ずしも精神科の力に頼る必要はありません。地域のコミュニティーに参加したり、人付き合いの幅を広げたりすることが役立つこともあります。自分に合ったコミュニティーに巡り合うのは簡単ではありませんが、だからこそ、せっかくできた友人やつながりを大切にすることが重要です。 精神科でカウンセリングを受ける場合も、予約が取りやすい場所と、長期的に通える場所の両方を視野に入れて検討することをおすすめします。自分のペースで孤独や悩みと向き合いながら、解決の糸口を見つけることが、より良い人生への第一歩になるでしょう」