「完全に負け戦」EU離脱後の英国が進む茨の道
短期的には何一ついいことはない
英国はEUとの交渉で強気の姿勢を崩さない。しかし土田氏は「英国は短期的には離脱していいことは何一つない。完全に英国の“負け戦”だ」との見方を示す。
「ジョンソン首相としては『年内に通商交渉を打ち切ると、欧州も困るだろう。だから譲歩しろ』というやり方だが、EUとしてはそれを突っぱねている。2年でも3年でもしっかり時間をかけて新たなFTAを結ぶ方針で、『出ていくなら勝手にどうぞ』というスタンス」 そのため、ジョンソン首相が強硬路線を続けるのは現実的には難しく、移行期間は最終的には延長されることになるのではないかという。 「移行期間の延長をめぐる英国とEUの協議の場で、移行期間が12月で終了することになったとしても、12月まではまだ半年ある。その間、まず英国内で『やっぱり延長すべきだ』という声が出て、その方向に向かうだろう」
今年1月に英国議会が可決した「離脱関連法」には、「移行期間を延長しない」という趣旨の記載があるが、「それであれば『延長する』という旨の新しい法律をつくればいいので、今年の後半以降に、そういう動きが出てくると思う。ただそれまでジョンソン首相は自分たちの鼓舞とEU側へのブラフ(こけおどし)として強いスタンスで交渉に臨むのではないか」と見通しを語った。 ただ仮に英国が移行期間を延長せず、EU各国と通商交渉がまとまらなかったとしても、「バックアップ(安全策)」は準備されているはずだとみる。 当初は昨年3月末だった離脱期限が3回延期されて今年1月末まで延びた間に、双方が最悪の事態に備えているのではないかというのだ。ただそれは英国とEUが内々で話し合ったものではなく、「各々が勝手に安全策を準備している状態」。 内容については、英国がこれまでEUにいた時と同じような経済取り引きのやり方を追認するとみられ、「ある程度、これまでと同質性が保たれたものになるだろう」。そのため「仮に12月に移行期間が終わっても、クッション(安全策)が準備できた分野に限っては、ある程度ショックは和らぐはず」だという。 だからといって、「合意なき離脱」状態になっても影響がないわけではない。「FTAが結べない限りは、関税が発生してしまう。それは双方に問題が出てくる。英国・EU間の物流が停滞し経済活動が悪化するが、それは英国に強く表れる。クッションができていても、だから大丈夫だということではなく、ダメージは緩和されるだろうということ。程度の問題だ」