【どうやって時間を読む!?】時計界の常識を覆す、日本再上陸の気鋭ブランドに注目
時計界のアカデミー賞と称され、同時に新鋭ブランドの登竜門としても定着したGPHG(ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ)。その2020年度チャレンジ賞にノミネートされ、一躍名を広めたのが、12年に創設されたベーレンスだ。ブランド名は、20世紀に活躍し、ドイツ工業デザインのパイオニアとして知られるピーター・ベーレンスに由来。彼が残した作品の数々が、ブランドの目指すクリエイションとも重なることから命名された。 “ノン・トラディショナル”をコンセプトに掲げるベーレンスのウオッチコレクションをひと言で表すなら“極めてユニーク”だ。 【ローラー式や天文時計まで!? そのほかのユニークモデルを見る】
その最たるモデルがGPHGのチャレンジ賞にノミネートされた“ロータリー”というモデルだろう。これはマツダが手がけたロータリーエンジンの形状と動きをモチーフにしており、三角形の金属製回転ディスクによって時刻を表示するものだ。一般的な回転ディスク式とは異なり、歯車のギア比を変えることで、三角形の頂点が常に現在時刻を指し示すようになっている。 ロータリーでは上のディスクで分、下のディスクで時間を示している。例えば写真のような場合は、“7時22分”となる。なお分表示で頂点が60分の位置にくると、次の頂点が0分の位置まできているため、時刻は常に表示されるというわけだ。価格は99万円だ。
また最新のクリエイションである“ウルトラライト20g”も面白い。手首に合わせてカーブしたケースに、何と直接ムーヴメントを組み込んだモデルなのである。機械式で湾曲したムーヴメントでは、過去にグリュエンが手がけ、カーヴェックスに搭載されたものが有名だが、同機では歯車の階層を変えることで全体を湾曲させていた。対してウルトラライトでは、歯車をわずかに傾け(8度)ながら曲面上に輪列を組み、約6mmという薄さも両立させているのだ。なお価格は165万円となる。 こうしたベーレンスの革新的なムーヴメントは、汎用エボーシュに独自のモジュールを追加して開発されている(一部オリジナルムーヴメントもあり)。そのため、これだけ独創的なモデルでありながらも、現実的に狙える価格帯で展開されているというのも特筆すべきだろう。 【問い合わせ先】大沢商会 時計部 TEL.03-3527-2682
文◎堀内大輔(編集部)