「サバが獲れない」漁業者が嘆息する背景「適正水準」から「乱獲」へ、年によって一転する資源評価 信頼されていないその実態とは
一部の漁業者・漁業団体からの反対が根強いからがその最大の理由なのだが、こうした反対論の背景にあるものとして「科学的管理と言っても、その前提となる資源評価を当てにできるのか」という懸念がある。
「2年前の情報で今年の天気予報」
こうした懸念が生じる一因として、資源管理に対する国のリソースが少なすぎることが挙げられる。拙稿「このままでは日本人の手で日本の漁業が滅びる」でも言及したが、24年度水産予算案約3169億円(前年度補正予算含む)に対して、水産資源調査・評価予算は107億円と3%に過ぎない。しかもこのうち前年度補正予算分49億円は調査船「蒼鷹丸」の代船建造に充当されるもので、これを引くと僅か52億円である。 資源評価を担っている水産庁の関連機関である「水産研究・教育機構」の調査研究費用は3年連続削減となり、地方の研究機関の人員削減や市場調査の縮減などが危ぶまれている。同機構に所属する研究者たちからの、少ない人員と予算の中、如何ともしがたいと困り果てている声をしばしば耳にする。 加えて問題なのは、資源評価に「1~2年のタイムラグ」が発生してしまう点だ。例えば23年漁期(23年7月~24年6月)のサバ漁獲総枠は23年4月に決定されたが、ここで用いられた資源評価は水産研究・教育機構が22年12月に行った資源評価会議に基づくものである。将来の資源予測に用いられたのは、21年漁期の資源量である。 データを集めてからそれが漁獲枠に反映されるまで相当期間のズレが存在する。22年に開催されたシンポジウムの場でも神谷崇水産庁長官(当時)自身「資源評価がデータ収集から結果が出るまで1~2年のタイムラグがあり、このことが漁業者が資源評価を信頼しない一因になっている」と問題点を指摘している。 昨年ではなく2年前の情報から今年の天気予報を行ったとしたら、当てにする人が多くはないであろう。魚の場合もこれと同様である。