【ホンダCB650R E-Clutch試乗】自動クラッチ制御+マニュアル変速の機構は便利で楽しい!?街中/ワインディングで試してみた
「E-Clutch」その実態は、全域で万能かつフレキシブルなシフトアシスト
通常のニュートラル位置(1速と2速の間)に入れ、ブレーキレバーをかけつつセルボタンを押すと、CB650Rの並列4気筒は普通に目覚める。そこから「クラッチレバーを握らなくていいんだろうか」と思いつつ足操作で1速に入れると、さほど大きなショックもなくカシャっとギヤが噛む感触が自覚できる。 早速自動クラッチ制御の恩恵を感じつつスロットルを開けると、半クラッチ状態をしばし続けながら車体が前に進み、2000rpmを超えたところで完全につながる。そして車速が乗るごとに足でシフトアップ。基本的には乗り手が自由にギヤを選べるから、早めにトップギヤに入れたって、低いギヤで回転を上まで引っ張ったっていい。だが、ギヤ段数表示の上下に矢印が出て、速度の割に高いギヤに入っていればシフトダウンを、回し過ぎていればシフトアップをしたほうがよいと、画面で指示を出してくれる。 しかし、この機構は矢印表示以上の世話は焼かない。だからトップ6速に入ったままでの発進も試せるし、その場合は長い半クラッチ状態を続けながらゆっくりと車体が進んだりする。だが、これはクラッチにも負担をかける。やめたほうがいいイタズラだ。 走り出したCB650Rのシフトアップの仕方は、昨今のスポーツモデルに多く普及したクイックシフターと同じで、スロットルを開けた状態でシフトチェンジをすればいい。そうすれば制御機構のほうで駆動を若干抜く作動を入れつつ、シフトアップしてくれる。通常のマニュアル車のように、変速時にクラッチを切ってわずかにスロットルを戻してつなぐ操作など要らないのだ。スロットルを元気に開けたときでも、マイルドに開けたときも同様で、ストレスのない加速を味わわせてくれる。 厳密に言えば、トルク変動の大きい1~3速辺りはギクシャク感は出やすい領域で、本当に上手いライダーが使うクラッチ(変速時の瞬時の切り/つなぎ操作)、それに合わせて回転をわずかに抜くスロットル操作には劣る面はある。だが、そこから上のギヤでは違和感のない滑らかな加速をしていく。またこうした加減速を味わって感じるのは、CBのようなフラットなトルク特性のミドルクラス並列4気筒は、自動クラッチ制御との相性がよさそうだということ。低回転からトルクの湧き出る大排気量シングルやツインだと、自動クラッチ制御がもっと難しいのではないかと想像したからだ。 そこで思い出したのが、ホンダはなぜこの機構を最初に650に搭載したかだが、メインのターゲット市場がマスの大きな欧州なのだと聞けば納得できる。彼の地での売れ筋がこの排気量帯のスタンダードスポーツなのであり、CB650RやCBR650Rはそれに該当するのだ。これを日本市場に当てはめれば、人気の高いレブル250辺りになるだろうが、日本市場を意識したE-Clutchの展開を考えるなら、ホンダはレブルあたりへの搭載だって、多分考えているかもしれない。 違和感なく走り出し、頭で前述のようなことを考えている内に、朝の通勤渋滞が始まった。5~20km/hといった速度域で10mほど進んでは止まるの繰り返し。こうした場面でのE-Clutchも従順で、程よく半クラ状態で滑った後で駆動がつながり、スロットルを戻せば塩梅のよいところで駆動が切れるマナーが丁度いい。だから渋滞にハマってもストレスがない。 ただし、少し気になったのは後ほどUターンを試したときのこと。当然ながら、マニュアル操作でのように、アイドリング回転でクラッチをつないでスルスルと走り出すという芸当ができない。自動クラッチ制御で駆動が繋がり出すのが2000rpmを超えた付近のようだが、ゼロから車体が動き出す微妙なところがマニュアル操作より大きく進んでしまう。これはE-Clutchの繋がり方の設定自体によるのか、CBのエンジン自体の微低速でのピックアップのよさが原因なのか定かではないが、あと少し煮詰めてほしい印象だ。
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