「私がファーストドーター」と言っていたイバンカ氏…なぜ父の演説にいないのか
「私がただの職員? とんでもない、私はファーストドーターです」。 ドナルド・トランプ前大統領の長女イバンカ氏(42)の言葉だ。ワシントンポスト(WP)のボブ・ウッドワード副編集者がトランプ氏について書いた回顧録『FEAR 恐怖の男 トランプ政権の真実恐怖』に出てくる内容だ。夫のジャレッド・クシュナー氏(43)と共にホワイトハウス常任顧問として最前線で活動したイバンカ氏が今回の大統領選挙レースでは姿を見せていない。イバンカ氏はホワイトハウス選任顧問の資格で韓国も訪問し、主要20カ国・地域(G20)会議などにも出席した。 トランプ批判者には「権力欲の化身」でありトランプ支持者にはファーストレディーのような父の右腕だったイバンカ氏の姿が見えないのは、今回の大統領選挙で興味深い点だ。ニューヨークタイムズ(NYT)が29日(現地時間)、「イバンカはどこへ?」というヘッドラインでイバンカ氏の不在を取り上げた理由だ。トランプ候補でなくカマラ・ハリス候補を公開的に支持するNYTのほか、ウォールストリートジャーナル(WSJ)など多数の米メディアもイバンカ・クシュナー夫婦の動きに視線を向けている。ピープル誌など総合日刊紙でないメディアでは「大統領選挙の敗北を憂慮したトランプ候補がイバンカ氏に(支援をしないという理由で)暴言を吐いた」という報道もあった。 イバンカ氏は姿を消しているのではない。むしろイバンカ氏はあちこちによく現れている。マリブのリゾートでセレブたちとパーティーを開いたり、カリフォルニアの海辺でサーフィンを習ったり、仏パリのエッフェル塔の前で写真撮影をしたりする姿があった。父でなくライバルのカマラ・ハリス候補を公開支持した歌手テイラー・スウィフトのコンサート現場でも確認された。父の演説現場にだけ現れていないのだ。 父は昨年裁判を受けたが、当時も証人として立った一度を除いて姿を見せなかった。証言台に立った時もイバンカ氏は父を積極的に擁護するのではなく、「私は父の財政状況について知る位置にいなかった」という発言だけをした。トランプ氏はセクハラなど34件の重犯罪容疑で有罪評決まで受け、控訴中だ。距離を置いているという声も出ている。 なぜか。NYTのインタビュー要請をイバンカ氏は断り、代わりに夫を通して立場を明らかにした。クシュナー氏は「イバンカを演説現場で見る可能性はゼロ」と語ったと、NYTは伝えた。クシュナー氏は「イバンカは2020年にワシントンを離れ、政治人生を終えることを決心し、その決心を今でも立派に守っている」とし「たとえ(妻の父が)大統領に当選しても私たちの人生で優先順位は変わらない」と断言した。 トランプ氏との不和説は否認した。クシュナー氏は「もちろん私たちは(トランプ候補を)応援する」と話した。その一方で「私たち夫婦の人生は前に向かって進むだろう」と語った。政界側には目を向けないということだ。イバンカ氏は反トランプのNYTとのインタビューは避けたが、最近あるポッドキャストで「政治という暗い世界を今は避けたい」と述べた。 しかしNYTはトランプ氏が当選すればイバンカ氏の夫婦はいかなる形であれ政界・財界に関与する可能性が高いという一部の見方も伝えた。すでにトランプ氏のホワイトハウス時代にイバンカ氏の夫婦が選任顧問として多様な利権を得たという批判を受けている。夫クシュナー氏が現在代表の私募ファンドの顧客がほとんどホワイトハウス時代に関係を築いた中東側政府および財界人であるのが代表的な例だと、NYTは伝えた。クシュナー氏の資産運用で稼いだ収益は1億1200万ドル(約170億円)という。 イバンカ氏とクシュナー氏の空席は他の子どもと配偶者が埋めている。エリック・トランプ氏の夫婦、ドナルド・トランプ・ジュニア氏らだ。トランプ・ジュニア氏は父がランニングメイトとしてJ・D・バンス上院議員を選ぶのに決定的な影響を及ぼしたと、米メディア報じた。 トランプ氏本人も回顧録などで父から受けた影響を詳しく記述していた。トランプ氏も家族を中心に事業だけでなく政治までしているということだ。今はもう長女イバンカ氏ではなく門番の権力はトランプ・ジュニア氏らに移る雰囲気だ。トランプ氏が5日の大統領選挙で当選する場合、「ファーストドーター」ではなく「ファーストサン(the First Son)」が出現する可能性がある。