野菜生産が酷暑で窮地、「水やってもお湯かけるよう」植えても枯れる苗多く…通年供給の仕組み途切れる危機
近年の酷暑で、野菜の生産に悪影響が出ている。高温による生育不良で収量が減るとともに収穫時期が変化し、同じ種類の野菜を通年で確保する産地リレーが途切れる現象が起きている。種苗メーカーは暑さに強い品種の開発を進め、農家も対策に追われている。(佐々木伶) 【図表】国内主要7産地で見たキャベツの産地リレー
コマツナ出荷できず
「35度超の日が続き、植えても枯れてしまう苗が多かった。収量は予定より2~3割少なくなりそう」。70ヘクタールの畑でキャベツを生産する「備中しお風ファーム」(岡山県笠岡市)の社長、藤井仁一朗さん(23)は表情を曇らせる。
苗を植えたのは例年通り8月20日頃。9月は、平均気温が25度を下回ったのは2日間だけという猛暑が続き、10月も下旬まで20度以上の日が続いた。キャベツの生育の適温は15~20度とされており、生育が遅れて収穫開始は例年の11月上旬から下旬にずれ込んだ。
藤井さんは「今後も厳しい状況が続くだろうが、日本の食を守りたい」と、育苗期間を延ばして丈夫な状態で畑に移植するなどの対策を検討中だ。
葉物は特に暑さの影響を受けやすく、奈良県では、発芽したコマツナが全く育たないまま枯れ、7~9月はほぼ出荷ゼロとなった。JAならけんの担当者は「35度を超えると、水やりしてもお湯をかけているようだった」と語る。
キャベツ、価格3倍に
今年は暑さの影響でキャベツの産地リレーのバトンタッチがうまくいかなかった。例年は11月頃に産地が入れ替わるが、今年は藤井さんのように生育が遅れる農家が多く、品不足が発生。大阪市中央卸売市場の1キロ当たりの平均価格は11月中、前年の3倍となる300円を超す日もあった。
消費の現場に影響も出ている。大阪市都島区の「とんかつ三谷」は「キャベツは減らせない。他のところでコストカットするしかない」と、11月から無料で選べる「ゆかりご飯」の提供をやめた。京都市のパート(40)は「たこ焼き用にスーパーに買いに行ったら1玉400円で驚いた。コメも含めて全てが高くなった」と嘆く。