「熱血すぎる予備校講師」が不合格を招く当然の理由…元生徒が明かす「空回り授業」の実例とは?
● 気分転換のはずの雑談が 全く面白くなかった! 予備校講師の中には、授業で面白いエピソードを披露し、生徒を惹きつける凄腕の話術を持つ方がいらっしゃいます。「授業と関係ない話」で時間を消費する場合もありますが、1時間の授業のうち数分 くらいは、辛い受験生活の息抜きができる時間も必要です。雑談で気分転換ができるので、受験生活全体を通してみるとプラスに作用しているかもしれません。 しかしA講師は、「授業と関係ない話をしているにもかかわらず、全く面白くないので、気分転換にならない」という有様でした。前述した補講も、実はその雑談のせいで、やらざるを得なくなっていたのです。 A講師は歴史の授業中、特定の人物名が出てくるたびに、その人物にまつわるエピソードを話すのですが、次第にそのエピソードと関係のない雑談をはじめます。 ご本人が特定されないよう、担当教科や雑談の内容は脚色していますが、次のように「受験で何が問われるのか」「受験生は何を覚えるべきか」といった本筋になかなか戻ってこない惨状でした。 「聖徳太子が亡くなった後、645年に大化の改新が起きました。ただ最新の学説では、聖徳太子が実在していたかは定かではないと言われているから、覚えても意味があるかは分かりませんけど……。 あ、そういえば、聖徳太子は10人の話を同時に聞けるという逸話がありましたね。僕もこの間、A君・B君・Cさん・Dさんから同時に質問を受けて困ったんですよ。ええと何の話でしたっけ。そうそう、聖徳太子の死後は蘇我氏が……」 こうなると、せっかく開いてくれた補講も、受験生にとっては効率の悪い勉強を強いられる「苦痛の時間」でしかありません。 通常であれば週に2時間の授業を、善意で3時間にしてくれたA講師の生徒を想う気持ちには脱帽です。しかし、授業の質と時間は必ずしも比例しません。たとえ3時間授業をしたとしても、実質的には2時間分、あるいは2時間に満たない密度の授業を繰り返しているのであれば、受験の邪魔でしかありません。 次第に授業中、生徒はみんな下を向いて自習をするようになりました。その態度を問題視したA講師に「先生の授業を聞かないと受からないぞ!」と発破をかけられたことがあったのですが、「自分の授業内容を見直してから言ってくれ」とみんな思ったことでしょう……。 そして残念なことに、この予備校に歴史の先生はA講師しかおらず、他の授業に切り替えることもできませんでした。