「ホームレスは生活保護で助けられない」相談窓口の職員が、困窮者にでたらめ発言 誤りを認めなかった安城市は半年後に一転して謝罪
昨年11月、愛知県安城市の生活保護相談窓口を、日系ブラジル人3世のエレナさん(仮名、42歳)が訪れた。新型コロナウイルス禍で職を失い、生活苦に陥り、生活保護を申請しようとしたためだ。外国人は基本的に生活保護法の対象外だが、エレナさんのような定住者は受給できる。国も「日本人と保護内容に差異が出ないように」と通知している。 しかし、応対した安城市の職員から、思いもかけない言葉を投げられた。 「外国人に生活保護は出ない」 「在留資格がなくなるから、ブラジルに帰ればいい」 幼い子ども2人を抱え、絶望したエレナさんの現状を知った弁護士や通訳が後日、改めて窓口を訪れたが、職員は「ホームレスであり、生活保護で助けられない」「最悪、強制送還」と不適切な発言を繰り返し、申請を拒否した。 問題を知った報道機関がエレナさんの話を報じると、安城市は「報道には事実誤認がある」と反論。市長も強弁し、「対応に誤りはなかった。『国に帰れ』などの不適切な発言もなかった」と繰り返した。
しかし、安城市のこの態度は、半年以上が経過した今年6月になって一変する。最終的には問題性を全面的に認め、市長が謝罪することになった。一体、何があったのか。(共同通信=井沢大介) 【※この記事は、記者が音声でも解説しています。共同通信Podcast「きくリポ」を各種ポッドキャストアプリで検索いただくか、以下のリンクからお聞きください】https://omny.fm/shows/news-2/32 ▽ブラジルに帰ればいい 一連の経緯を、関係者の証言や音声データなどを基に振り返る。 エレナさんは工場勤務の仕事を失い、生活苦に陥った。所持金が底を突きかけて、日系ブラジル人の友人に相談、生活保護の申請を勧められ、2022年11月1日、通訳のできる友人と一緒に安城市の窓口を訪れた。「これで何とか立て直せる」。そう思っていた。 しかし、面談した男性職員は「外国人に生活保護は出ない」「在留資格がなくなるから、ブラジルに帰ればいい」と申請をあっさり拒否。面談も約15分で打ち切られ、早々に追い返された。