伝統継承か? 留学生加入か? 予選会で見え隠れした箱根駅伝の問題点
2017年度の箱根駅伝予選会。名門・中央大がついに陥落した。ラスト1枚のチケットを手にした日大に44秒届かず、選手たちは泣き崩れた。総合優勝12回を数える日大と、同14回を誇る中大。両校は箱根駅伝の歴史を語るうえで、欠かすことのできない名門だ。とりわけ第31回大会(1955年)からの11年間は両校のどちらかが総合優勝を獲得。当時は「日中戦争」と呼ばれるほど、熾烈な争いを繰り広げてきた。 しかし、ときの流れは残酷だ。約60年後の第93回大会は本戦出場をめぐり、両校が最後のイスを争うことになるのだから。そして、日大が滑り込み、中大は87回で連続出場が途切れることになる。 超伝統校である日大(10位/10時間16分17秒)と中大(11位/10時間17分01秒)の差はどこにあったのか。もし1つだけ挙げるとしたら、留学生の有無になるだろう。 今回の予選会には、過去最多となる7人の留学生ランナーが参戦した。箱根駅伝は本戦・予選会ともに留学生は各校ひとりしか出場できないため、7校(日大、拓大、東京国際大、創価大、日本薬科大、武蔵野学院大、桜美林大)が留学生を起用したことになる。 レースをご覧になった方はわかると思うが、そのパワーは圧倒的だ。鈴木健吾(神奈川大)が日本人歴代3位(58分43秒)の好タイムで個人総合3位に食い込んだ以外は、上位6位までを留学生が占拠した。 個人総合トップは、日大のパトリック・マセンゲ・ワンブィで58分15秒。中大のトップだった町澤大雅に1分50秒もの大差をつけた。もし、日大が留学生を起用しなかったとしたら、両校の順位は簡単にひっくり返る。それどころか、チーム11番目の選手とワンブィのタイム差は5分53秒もの開きがあるため、総合タイムは10時間22分10秒となり、総合順位は、13位までダウンする計算だ。 見方を変えれば、ワンブィは単純計算でチームに5分53秒ものアドバンテージをつくり、箱根駅伝出場をもたらしたことになる。 留学生パワーを生かして予選突破を果たしたのは日大だけではない。創価大と拓大も、留学生がもたらした貯金が大きかった。特に創価大は日本人だけで戦った前回(14位)から3位に大幅アップしている。反対に前回、シテキ・スタンレイが個人総合3位に入り、9位で初出場をつかんだ東京国際大は、留学生の失敗が痛かった。今回は、1年生のモグス・タイタスが出場して、15kmを7番目で通過しながら、途中棄権。チームは総合15位に沈んだのだ。 今年の創価大と昨年の東京国際大は非常に似たようなレース運びで、出場権を勝ち取っている。ケニア人留学生と日本人の主力数人をフリーで走らせて、他の選手は「集団走」に近いかたちで、確実に20kmを走らせるという戦略をとったのだ。 留学生が上位で走ってくれるため、実力のない日本人選手たちは無理をする必要がない。稼ぐチャンスをつぶすかわりに、失敗するリスクを回避。メンタル的にも楽に走ることができ、チーム全体で考えるとプラスになることが多い作戦だ。 ちなみに今回44秒差で連続出場を逃した中大は、フリーで4人を走らせるも、そのうち2人が大きく失速した。結果論だが、フリーで走る選手を2人だけにして、あとは集団走で行く作戦をとっていれば、連続出場を死守できた可能性が高い。しかし、そういうことができなかったのは、留学生のいるチームと違い、大きくタイムを稼ぐ選手がいなかったという理由もある。