金(きん)はまだ買い!2025年に3000ドル到達も。金利が付かないのに値上がりするワケ
今起きていることは冒頭で述べたとおり、年初からの10カ月間だけで730ドルの上昇を実現している。超長期上昇トレンドは、およそ四半世紀にわたって継続中で、2000ドル以上も上昇している。これらの上昇が有事だけで起きていないことは明白だ。 ■代替資産や代替通貨、中国需要も 金に対しては短中期・中長期・超長期で、7つのテーマが大きく左右している。 まず短中期では、「有事ムード」(不安発生時の資金の逃避先)、「代替資産」(株の代わり)、「代替通貨」(ドルの代わり)の3つ。また中長期では、「中国やインドの宝飾需要」(新興国での個人の売買)、「鉱山会社」(ヘッジ動向)、「中央銀行」(外貨準備高における金保有量の増減)の3つである。
そして超長期においては、「見えないジレンマ」(世界の民主主義の行き詰まり、世界分断の深化)だ。これらは多かれ少なかれ、金市場に対して、絶えず上下いずれかの圧力をかけている。 近年で2023年半ばから直近までの突出した上昇は、短中期のテーマのうち、「有事ムード」と「代替通貨」による影響が大きい。 まずウクライナ戦争が長期化したこと、中東情勢が緊迫化していること、北朝鮮がミサイル実験を続けていることである。これらが有事ムードをかき立て、金相場に強い上昇圧力をかけている。
同時に、利上げ一辺倒だったアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が利下げ方針に転換したのを受け、金利ゼロである金の保有妙味が相対的に増しやすくなった。これは代替通貨に起因する上昇圧力だ。 一方で、アメリカ株式市場が高騰する場面が見られるため、「代替資産」の圧力はおおむね収束に向かっている。結果的に有事ムードと代替通貨という2つのテーマによって、突出した金価格の上昇が起こっていると言えるだろう。 ■中央銀行が買っている事実も大きい
では2000年ごろから始まった、超長期の緩やかな上昇トレンドのテーマとは何か。 当初は「中国やインドの宝飾重要」による影響が大きかった。2000年代前半に発生した新興国の圧倒的な経済成長が、国内の個人の可処分所得を増やし、金を購入する動機を強めていった。 2010年以降は、世界全体の民主主義が行き詰まりを見せたことが一因となり、世界の分断が加速した。これによって、複数の戦争が勃発したり、非西側の資源国による原油などの出し渋り(減産や輸出制限など)が目立って、大規模な高インフレがもたらされたりしたのである。