トランプ氏との早期面会断念、石破外交に求められる〝現実路線〟日本へ要求を強める恐れ 安倍氏らが残した「資産」活かせ
【岩田明子 さくらリポート】 石破茂首相が、南米訪問に合わせて目指していたドナルド・トランプ次期米大統領との面会が見送られた。トランプ氏側が、来年1月の就任前は、外国要人とは原則面会しない方針を伝えたようだ。トランプ氏は個人的関係を重視する外交を進めるため、日本にとっては痛手だ。 【写真】石破首相、座ったまま握手…首脳会議での映像が物議 安倍晋三元首相は、第1次トランプ政権(2017年~21年)誕生前の16年11月、いち早くトランプ氏との会談にこぎつけ、その後の蜜月関係につなげた。安倍氏が信頼を勝ち得た決め手は、トランプ氏が興味を示していた北朝鮮について有益なアドバイスを送ったことにある。 トランプ氏は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記について、「天才なのか、それとも狂っているのか」と聞いた。安倍氏は官房副長官として同行した日朝首脳会談(02年9月)の経験や、その際に対面した正恩氏の父、正日(ジョンイル)総書記の特徴、なぜ各国の北朝鮮外交が失敗してきたかなどを詳細に説明した。 その結果、トランプ氏は「これからは、北朝鮮や中国についてもいろいろ相談したい」と、安倍氏を頼りにするようになった。18年の米朝首脳会談前には、交渉のテーブルに乗せる内容から開催地についてまで相談があり、会談終了直後には、トランプ氏が大統領専用機「エアフォースワン」から結果を安倍氏に電話するまでの関係を築いた。 こうした経験から考えても、石破首相が早期にトランプ氏と会う意味は大きく、重要性は増していた。トランプ氏は政治経験のなかった第1次政権に比べ、第2次政権では側近をイエスマンで固めている。より独自色を打ち出して日本への要求を強める恐れがあるからだ。 安倍氏は、安全保障ではトランプ政権と緊密に連携したが、通商交渉では熾烈(しれつ)な交渉を繰り広げ、戦略的に米国を押さえ込むことに成功した。 安倍氏が20年8月に退陣を表明した際、トランプ氏は電話会談で「貿易交渉では正直負けたと思った。でも、それはシンゾーが相手だったからだ」と吐露していた。 タフさを増したトランプ氏は第2次政権で、日本に何を要求してくるのか。