トランプ氏との早期面会断念、石破外交に求められる〝現実路線〟日本へ要求を強める恐れ 安倍氏らが残した「資産」活かせ
対米貿易黒字の解消は、当然強く求めてくるだろう。20年に発効した日米貿易協定についても、米国産品の輸出拡大を目指して再交渉を求めてくる可能性がある。安全保障面でも、防衛負担拡大を求めてくることが予想される。
石破首相に求められるのは「独自外交」ではなく、過去の経験を生かした「現実的な外交」だ。今回の日米韓首脳会談では、3カ国の連携の重要性、日中首脳会談では「戦略的互恵関係」の包括的な推進を確認するなど、過去の政権が進めてきた外交を踏襲するかたちとなった。
日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しており、日米同盟の重要性も大きくなっている。トランプ氏との会談は実現しなかったが、安倍氏らが残した「外交資産」を最大限活用して、安定的な日米関係の継続につなげてほしい。石破首相に課された責任は重さを増している。
■岩田明子(いわた・あきこ) ジャーナリスト・千葉大学客員教授、中京大学客員教授。千葉県出身。東大法学部を卒業後、1996年にNHKに入局。岡山放送局で事件担当。2000年から報道局政治部記者を経て解説主幹。永田町や霞が関、国際会議、首脳会談を20年以上取材。22年7月にNHKを早期退職し、テレビやラジオでニュース解説などを担当する。月刊誌などへの寄稿も多い。著書に『安倍晋三実録』(文芸春秋)。