社員の流出防止に「他社の成功事例」は通用しない、身の丈に合わない施策は「裏目」に出ることも
人材に投資することで企業価値を高める人的資本経営が注目されており、エンゲージメントは人的資本経営において重要な指標の1つとされています。今や転職が当たり前の時代になっており、企業は従業員や求職者から選ばれるためにも、エンゲージメントを高めることは大切です。しかし、エンゲージメントは近年よく聞かれるようになった言葉であり、誤った認識を持っている方も少なくありません。 本稿では、エンゲージメントにまつわる誤解を解消し、その向上のポイントを紹介します。『企業実務』の記事を再構成し、組織人事コンサルタントである、リンクアンドモチベーションの田中允樹さんが解説します。(前編記事はこちらから) 【図】エンゲージメントの状態に応じた打ち手の方向性一覧
■他社の成功事例は、あくまで他社の事例にすぎない Planにおける誤解…「他社の成功事例を真似るのがエンゲージメント向上の近道」 Seeの次は、Plan(施策立案)に進みます。ここで誤解してはいけないのは、他社の成功事例を模倣するのが、エンゲージメント向上の近道ではないということです。 今の時代、ネットで検索すれば、エンゲージメント向上の施策集や成功事例は簡単に見つけられるでしょう。 それらを模倣する企業は多いと思いますが、それでエンゲージメントが向上するケースはほとんどありません。それどころか、他社の成功事例が自社では失敗事例になることもあります。
分かりやすい失敗事例を2つ紹介します。 ①マッサージチケットの配布…X社は、日頃の労をねぎらおうと、従業員にマッサージの無料チケットを配布しました。その結果、ある部署からは感謝の声が届いた一方で、エンゲージメントが低い別の部署からは「もっと働けということか」というネガティブな反応が返ってきました ②ピザパーティーの開催…Y社は、コミュニケーションを活性化させてオープンな組織風土を醸成しようと、ピザパーティーを開催しました。しかし、パーティーでの会話は会社や上司に対する不満ばかりでした。ピザパーティーは意図せず「愚痴大会」のようになり、組織風土の悪化を招いてしまいました。