大の里（右）が稽古始めで幕下以下の力士に胸を出した

　大関・大の里（２４）＝二所ノ関＝が２日、茨城・阿見町の部屋で新年最初の稽古を行った。１日で故郷・石川県を襲った能登半島地震からちょうど１年。大相撲初場所（１２日初日、東京・両国国技館）から始まる２０２５年の土俵でも、被災地へ「元気」を届けることを誓った。課題とする安定感を求め、昭和以降最速、所要１２場所での横綱昇進を目指す。 　故郷への思いを胸に、大の里は黙々と新年の稽古を始めた。相撲は取らず、てっぽう、すり足などの基礎運動に加え、幕下以下の力士に胸を出した。稽古を終え、能登半島地震から１年が過ぎた心境について「石川のことを思って、この１年頑張ってきた。自分の成績で明るいニュースを届けたいと思っていた」と述べた。「（２５年も）自分の相撲を見て、少しでも元気になってくれたらいい」。これからも被災地のため、土俵へと上がる。 　稽古休みの元日は、震災関連のテレビ番組に見入ったという。「１年たっても大変な状況。豪雨もあった。まだまだ復興への時間はかかる」。昨年２月には液状化で自宅に住めなくなった祖父がいた内灘町の避難所を訪問。能登半島も回り「変わり果てた姿だった」。言葉を失ったが、大の里の取組を見て勇気をもらっている被災者の存在を知った。力士としての使命感を覚え、２度の優勝と大関昇進につなげた。 　今年の抱負は「昨年はいいときと悪いときで“ジグザグ”だった。今年は振り幅を少なくして、一定の成績にしたい」。新大関の先場所は得意の右差しと左おっつけを封じられて９勝６敗だった。昨年１２月の冬巡業から立ち合いでの馬力を上げるため３キロ増量し、自己最高の１８５キロに。安定感ある取組を求め、まずは肉体改造に着手した。 　横綱昇進の内規は「２場所連続優勝か、それに準ずる好成績」。初場所と春場所で達成すれば、所要１２場所での昇進となる。狙うは昭和以降では羽黒山、照国の所要１６場所を抜く最速横綱。「相撲のことを追求して、勉強しないと上（の番付）がない」。故郷の思いを再確認して迎えた２５年。足元を見つめながら、最高位へと挑戦する。（山田　豊） 　◆大の里の石川訪問　昨年２月に幕内・遠藤（３４）＝追手風＝、同・輝（３０）＝高田川＝とともに被災した故郷・石川の避難所を訪問。初優勝を遂げた夏場所後の６月にも金沢市内の避難所を訪れた。７月の名古屋場所前には生まれ育った津幡町で優勝パレード。２度目の優勝を果たし、大関昇進を決めた秋場所後の１０月には秋巡業が金沢市内で行われ、９月に豪雨被害にも遭った県民を勇気づけた。 ３大関の出世争いに注目 　◆角界展望　２５年は大の里、琴桜（２７）＝佐渡ケ嶽＝、豊昇龍（２５）＝立浪＝の３大関が繰り広げる出世争いに注目が集まる。一人横綱・照ノ富士（３３）＝伊勢ケ浜＝は両膝の古傷や糖尿病などの影響で、昨年皆勤したのは優勝した２場所だけ。初場所で綱取りの琴桜と豊昇龍が優勝かそれに準ずる成績を残せば、横綱に昇進し主役に躍り出る。 　大の里も、２場所連続優勝と得意にする両国国技館で自身３度目の賜杯を抱き、昇進レースに割って入りたい。１０場所ぶりの返り三役となった小結・若隆景（３０）＝荒汐＝、昨年春場所で新入幕優勝を成し遂げた幕内・尊富士（２５）＝伊勢ケ浜＝も負傷を乗り越えて番付を戻しており、新春の土俵を盛り上げてくれそうだ。