「日本の運転マナー = 三流レベル」は本当か? データ&歴史で再検証、原因は“警察”にもあったのかもしれない
「国民皆免許」の時代
1978(昭和53)年の「警察白書」には、 「国民皆免許(かいめんきょ)時代の到来」 との言葉が登場した。 「国民皆免許時代を迎えて世論を形成する国民の約半数が運転者となり、それらの人々の意見を交通行政の上に十分反映させるとともに、無事故、無違反の善良な運転者については社会的にも適正に評価される方策を推進する必要がある」 と記述されている。事故歴が保険料率に反映されたり「ゴールド免許」など、ある程度のインセンティブは設けられたが、重大事故防止に対する実効性は確実とはいえない。 図は国内の免許保有率(免許取得が可能な年齢人口のうち、何らかの免許を持っている人の割合)の推移を示す。「団塊の世代」と同時進行する「国民皆免許」の世代が繰り上がってゆくのだから 「高齢ドライバーの問題が多発することは必然」 である。高齢者の交通事故は、かつては歩行者(自転車)として被害者の立場が議論の主な対象であったが、近年は加害者となる事故が増加している。高齢者の免許返納運動も呼びかけられているが、代替の移動手段がない地域では容易に免許返納に応じることもできない。 2019年に政府は「成長戦略の一環」として、高齢者専用免許を設け特定の安全設備(ペダル踏み間違い防止装置など)を備えたクルマの運転に限定することを検討中と伝えられたが、その後は具体的な動きがない。なお「皆免許」といいながら免許保有率には 「男性と女性で明確な差」 があり、これはこれで社会的なテーマとして注目する必要がある。
「免許制度」の問題なのか
首都圏の電車で「当所は合格率99%」という教習所の広告を見たことがある。以前の筆者の記事でも触れたように、自動車の普及は 「運転免許と表裏一体」 であり、国策として免許の取得が推進されてきた経緯がある。「誰でも免許が取れる」となれば、その副産物として運転不適格者が混在してくるのは避けられない。すると日本では 「免許が安易に取れるからマナーが悪いのか」 という疑問が生じるが他の国はどうなのだろうか。 教習時間・費用・審査項目などのいくつかの指標から、免許取得の難易度を国際ランキングした「zutobi」というサイトがあり、日本は厳しいほうから21番目となっている。前後にデンマークやドイツなどが並び、少なくとも 「日本が緩すぎとはいえない」 ようだ。同サイトでは教習内容や指導員の質までは評価されていないが、日本の教習所は丁寧に教えてくれる印象があるし、教習所に通わず自動車試験場で直接受験する「一発試験」はかなり厳しい。それにもかかわらず、冒頭の状態別の交通事故死者のデータのように日本とドイツその他との違いが生じる。免許を取得した後の問題、すなわち教習所(試験)で模範運転して試験さえ通ればよく、 「現実の路上では成り行き任せ」 という実態がなぜ起きるのだろうか。