「日本の運転マナー = 三流レベル」は本当か? データ&歴史で再検証、原因は“警察”にもあったのかもしれない
交通マナーと車両品質のギャップ
筆者(上岡直見、交通専門家)は先日、当媒体に「「クルマは一流、運転マナーは三流」 そんな日本にとって、生活道路“時速上限30km”は福音となるのか?」(2024年6月12日配信)という記事を寄稿した。そこで「以前から、日本の道路交通は「クルマは一流、ドライバーは三流」といわれている。工業製品としての自動車の品質は高いが、運転マナーは劣悪という意味である」と書いた。 【画像】日本は簡単すぎる? これが「世界の運転免許ランキング」です(計22枚) この「クルマは一流、ドライバーは三流」という表現は、有名人がいったのか何かはわからないが、 「数十年前の自動車雑誌」 に載っていた。当時は年間の交通事故死者が1万6000人超の時期で“走る凶器”という言葉も生まれ、メカに対する興味が中心の自動車雑誌でさえマナーの問題に触れざるをえなかったのだろう。 工業製品としてのクルマは当時でもかなり品質が改善されていて、少なくとも国内で普通の使い方をしている限りは故障を心配しながら乗ることはまずなかった。運転免許の筆記試験で「構造」の問題が出なくなったのもこのころからである。ユーザー側に知識や技能を求められる「機械」ではなく、いわば 「家電製品」 に近くなったからだ。しかしドライバーの側はどうだろう。 ・飲酒運転 ・過剰なスピード超過 ・不注意運転 ・あおり運転 ・店舗突入 ・ひき逃げ などが現在でも後を絶たない。人間の能力や本質は50年や100年では大きく変わらない。現在でもクルマをめぐる問題の多くは、人間の側の「三流」に起因して発生しているのである。
データでみえる「三流」
一流や三流など“客観的な基準”があるわけではないが、交通事故の統計からある程度の傾向はわかる。 図は交通事故統計(2022年)から、交通事故死者のうち ・自動車乗車中 ・二輪・原付乗車中 ・歩行者・自転車 の状態別割合の国別の比較である。日本は「歩行者・自転車」の比率が欧州諸国に比べて明確に高い。また日本で「人対車両」の事故が全体で3万6801件(同年)のうち「歩道」と「横断歩道」、すなわち 「そもそも人と車両の接触があってはならないはずの状況」 で、1万3302件の事故が起きている。 これらのデータで思い出したのはドイツでの体験である。横断歩道を渡ろうとしていたところ遠くからクルマが減速して停まり、自分のために停まってくれたのかと不思議に思うほどだった。日本では信号のある横断歩道でも速度を緩めず接近するクルマが多く、停まる気がないのかと不安になることが日常茶飯事なので、この体験は印象的だった。 ドイツでもすべてのドライバーがそうかは断言できないが、他の人からも同じ感想を聞いたし、前述のデータからも納得できる。また人対クルマの関係だけではなく、他者に無頓着な運転をするドライバーが多ければクルマ同士の事故の可能性も高くなることは当然である。