『若草物語』涼の強さと未熟さが浮き彫りに 回を重ねるごとに深みを増す堀田真由の表現力
心に思うことを全て口にするのも、何も言わずに抑え込むのも、どちらも正解とは言えない。そんな難しい判断の中で、涼(堀田真由)は想いを伝える方法をまだ手探りで探しているのだろう。そうでなければ、帰りのバスで、衿(長濱ねる)を思う涙が流れないはず。日曜ドラマ『若草物語―恋する姉妹と恋せぬ私―』(日本テレビ系)第8話は、恵(仁村紗和)の「言うならへこむな へこむなら言うな」という言葉が沁みる。 【写真】涼(堀田真由)が衝撃を受けた現在の衿(長濱ねる)の姿 これまでも激しく泣き、無邪気に笑い、そして姉妹と仕事への思いを真っ直ぐにぶつけてきた涼。その予測不能な行動に、視聴者は固唾を飲みながらも、目が離せない魅力を感じてしまう。正しいと信じることを突き通す強さは、時として周りを傷つけてしまう諸刃の剣だ。 従来のヒロイン像を軽やかに飛び越えていく、この“攻めた”ヒロインを演じる堀田真由の表現力は、回を重ねるごとに深みを増していく。そんな涼が、自分の信じる道を進みながら、どんな答えにたどり着くのか。その行方に、多くの視聴者が心を揺さぶられているのではないか。 今回のエピソードは、涼の本質を鮮やかに映し出す1話となった。恋愛至上主義を否定し、自分の道を突き進んできた彼女の内に秘めた強さと、その裏側にある未熟さが、同時にくっきりと浮かび上がったからだ。 海辺の町で2年ぶりに衿の姿を見つけた涼と律(一ノ瀬颯)。しかしそこにいたのは、かつて役者の夢を掲げていた頃の衿ではなく、幼い子どもから「ママ」と呼ばれる衿だった。 涼の胸には喜びより戸惑いが先立つ。「なんでいなくなったの? ここで何してるの?」。矢継ぎ早の問いに、衿は静かに、しかし凛として答えた。 「わたしは涼が思い描いていたような、完璧な妹なんかじゃないの」 その言葉の裏には、2年前から誰にも打ち明けられなかった真実が潜んでいた。憧れだった役者の肩書きとは裏腹に、芝居の仕事はほとんどなく、実質ホステスのような日々を送っていたこと。そして、助監督として着実に夢を追う涼の姿を見るたびに、心が締め付けられる思いに駆られていたことを。 衿の変貌に衝撃を受けた涼は、次第に仕事への集中力を失っていく。そして、送ったメッセージの既読が衿ではなく子どものものだったこと、衿が涼の脚本家としての現在を知らなかったことに、涼はショックを受ける。 「普通の主婦みたいなことして! 間違ってる!」 深い愛情があるからこそ、逆に相手の人生を自分の思う「正しい」で縛ってしまう涼。その真っ直ぐすぎる思いは、結果として衿を遠ざける原因となっていた。第8話の前半で見せた涼の頑なな態度に、視聴者の多くが戸惑いを覚えたことだろう。だがその同じ真っ直ぐさが、恵とのやりとりでは違う形で現れる。