「ESG」ラベル、リスク移転市場で広がる-投資家側が銀行に要望
(ブルームバーグ): 銀行が資本に余力を持たせるため利用する「SRT(significant risk transfer=重大なリスク移転)」市場で、「ESG(環境・社会・企業統治)」と見なされる商品が広がり始めている。ESGプロダクトがさまざまな市場で販売しづらくなっている現状に反する動きだ。
ESGラベルの付いたSRTの割合は、2023年に約2倍の11%に達した。今年は過去最大を更新する可能性がある。国際信用ポートフォリオマネジャー協会(IACPM)のエグゼクティブディレクター、ソムロック・レオン氏が明らかにした。
同協会によると、21年まで6年間の平均は、わずか3.4%の割合に過ぎなかった。今後数カ月以内に24年の統計を公表する予定だという。STRは「synthetic risk transfer(合成リスク移転)」とも呼ばれる。
最大のSRT市場となっている欧州連合(EU)の政策当局は、競争力が損なわれているとの申し立てを踏まえ、ESGの報告要件を一部見直す方向。米国では、共和党の議員らが金融業界が「気候カルテル」を形成していると非難している。
レオン氏はインタビューで、そうしたESGへの逆風下、銀行はSRT取引で投資家の要望に応じESGと認定していると指摘。銀行がSRTに向かう主な目的は「規制資本とリスクの管理」であり、「サステナビリティー(持続可能性)が多くの投資家にとり重要な基準」である状況への対応も強めていると同氏は話した。
銀行はSRTを活用し、特定の融資ポートフォリオから信用リスクの一部を切り離す。 損失リスクの一角はヘッジファンドや年金基金などの機関投資家に移転され、リスク引き受けに対し2桁の手数料が支払われることも多い。
この取引により銀行は必要とする資本を減らし、貸し出しを増やすことができる。 ローン債権は銀行のバランスシートに残り、こうした取引の大半は「シンセティック(合成)」と呼ばれる。