地域文化商社「うなぎの寝床」が伝える、その土地ならではの商品
「自分の身近にある地域文化」を知ってもらいたい
ー地域文化を伝えていくなかで、印象に残ったエピソードを教えてください。 弊社を設立した当初は九州のものを中心に集めていたのですが、近くに住む人からも「地元にこういうものがあることを知らなかった」というお声をたくさんいただきました。そのときに、「近くにあっても、知らないことは結構あるんだな」と思いました。 また、1度ご来店くださった方が後日、知人と一緒にお越しいただいたときに、自ら久留米絣についてご説明されていたんです。その姿を見て、「伝わったんだな」と実感したこともあります。 私たちだけですべての人に伝えられるとは思っていないので、いろいろな人から伝わって、その地域の文化が広がっていけばいいなと思っています。お客様ではありますが、伝える側になってくれている。それは、やはりうれしいですね。 ー地域文化に関わるなかで、難しさを感じることはありますか? 弊社では、伝統工芸のような国の指定品目になっている商品から、どんどん新しいやり方を取り入れている商品まで、規模や製造方法の異なるものを幅広く取り扱っています。 特に昔のやり方にも価値を見出しているものは、現代にうまくフィットしない部分がどうしても出てきていたり、後継者がいなかったり、原材料不足になったりと、いろいろな問題があります。そのような課題に対して、どのように関われるかは難しいところです。 ただ、作り手の方々はそれぞれの問題解決に向き合われています。たとえば、稲の軸の部分を使って作る線香花火は、国内でも福岡にある花火製造所でしか作られていません。 原材料は海外から仕入れていたのですが、そこが辞めてしまうという話があり、もう原材料が手に入らなくなってしまいそうな状況でした。そこで、「自分たちで作ろう」と、その花火製造所は自分たちでお米作りを始めました。 基本的にはどの作り手さんも自分たちでどうにか解決しようと取り組まれているので、その際に必要なつながりがあれば紹介したり、情報を提供したりしていければいいなと思っています。 ー御社の今後の展望を教えてください。 私たちに求められているのは、やはり物を売ったり、売れるものを作ったりすることなので、世間に知ってもらう、買ってもらう力が必要です。私たちがなかなか売ることができないと、作り手に次の注文ができません。 作り手から買えなければ、地域文化に貢献もできないので、今作っている方たちから預かった商品を、きちんとお客様に届けたいです。より良い形で、その商品を欲しい人に届けられる力を伸ばしたいと思います。 また、今まで九州で10年ほど店舗運営を行っていますが、愛媛の店舗も「四国や瀬戸内のものを中心に、日本中のものと比較しながら地域文化を伝えていく」という、これまでと同じようなやり方で運営しようと考えています。そのため、場所が変わってもきちんと展開できるようにしていきたいです。 地域文化はどこにでもあるので、みなさんにはまず「身近にある文化って何だろう」と考えてもらえたらいいなと思っています。