地域文化商社「うなぎの寝床」が伝える、その土地ならではの商品
ー商品は、九州で作られているものが多いのでしょうか? 九州のものが軸になっていますが、九州のものを深掘りできるようにしたいと考えているので、全国のものを仕入れています。 たとえば、九州には「久留米絣」という綿の織物がありますが、綿の織物自体には福山デニム、遠州織物、今治タオルなどいろいろなものがありますし、それぞれ特徴が異なります。特徴は比較してみないと分からないと思うので、いろいろなものを揃えました。
ーたしかに、商品を比較しながら見るとそれぞれの特徴がよく分かりそうですね。 弊社は、「地域文化商社」なんです。福岡県八女市にある店舗「旧寺崎邸」には、「ネイティブスケープストア」という名前が付けられています。 「ネイティブスケープ」は造語で、弊社では「その土地らしさのある文化=ネイティブ」「過去から未来への時間の中で起こる人々の営み=スケープ(風景)」としていて。「土地や歴史が商品であり、それを販売している場所」という意識を持って店舗を運営しています。ただ、土地や歴史は売れないので、有形である実際に使えるもの(土地との接点を持てる商品)を販売しています。 私たちはそういう思いで場を作っていますが、買い物する方にも必ず深く考えて買ってほしいというわけではありません。「かっこいい」「可愛い」と思って買う。地域文化に触れる入り口は、そのような気持ちからでもいいんです。まずは興味を持ってもらう。そこから、弊社としては、ちょっと深掘りすると違う魅力や背景がいろいろ見えてくるような商品を揃えています。 もちろん、買ってもらった後、生活になじむものもあれば、合わなくて使わなくなってしまうものもあるでしょう。一方で、知られないままなくなってしまうものもあります。弊社が「実はこんなものもあるよ」と提案することで、生活の風景のひとつとしてその商品がつながっていくきっかけになればいいなと思っています。 ー商品の背景を知らせるために取り組んでいることはありますか? 店舗では、接客時にお伝えしたり、商品の近くに原材料を置いたりしています。たとえば、焼き物の食器の場合は商品の横に土を、原料に石を加えているガラスのコップの近くにはその石を置いています。 こうすることで、お客様に「何でこれがあるんだろう?」と興味を持ってもらうきっかけを作っているんです。そもそも、商品がどのような材料から作られているのかを知らない方も多いと思うので、そのような工夫をしました。 ほかには、来店された方が住んでいる場所によっては地理的な話をしたり、Web上には写真や動画、テキストでいろいろ情報を残したりしています。埋もれてしまいそうなくらいたくさん記事があるのですが、いろいろな情報を残しておくことにはとても価値があると思っています。