手土産に無関心な人は仕事ができない。伊藤忠岡藤が考える贈り物の選び方
「手土産には予算計画や提案書と同じくらいの労力を費やす」
手土産についての話の続きである。 「僕は毎月、秘書から『来月、会う予定のお客さまはこれこれこういう方たちです』とリストをもらう。そのリストにはたいてい、果物とかお土産の品物が書いてある。それを一つひとつ、眺めて、お客さんの顔を思い浮かべながら、考えて品物を決める。決める前に、前に会ったことのある人、お土産を渡したことのある人ならデータも見ます。全部、調べてある。同じ品物を上げたら申し訳ないから、違うものにする。 何を贈るかですが、僕はまず相手に喜ばれるもの。そして、旬のもの。値段もほどほどのもの。 なるべく贈らないようにしているのが胡蝶蘭とかよく贈り物としてもらうお菓子の類……。胡蝶蘭は昇進祝いでもらったことがあるけれど、枯れていく花を一つひとつ取り除いたり、秘書の手間が大変だ。それに大勢から胡蝶蘭をもらったら、置く場所に困るでしょう。祝電もなるべくやりません。 かつて、社内の結婚式に出た時、部門長、部長、課長、主任、同僚とみんなが3000円くらいもする立派な祝電を送っているのを見て、ええ加減にせいと思ったことある。みんなで相談してお金を取りまとめてワインの1本でも贈った方が新郎新婦はよほど嬉しいのと違うかな。 贈り物は贈った人のセンスが出ます。商人やったらちゃんと考えてから人に贈ることです。それでも、僕は直前でも手土産を変えたりすることあるんです。 海外の人が来るパーティだと、『和菓子、シャインマスカットは他の人も持っていく品物だ』と思ったら、直前に変えます。そうすると自分もまた安心できる」
「会社に届いたものを自宅に持って帰る人間は出世しない」
贈り物についての続きである。品物を贈る場合のポリシーは岡藤が説明した通りだ。商人としての正しい判断だ。では、もらう立場になったら、考えておくことは何だろうか。 社会人になったら、平社員でも取引先から手土産や贈り物ををもらう。地位が上へ行けば行くほど、品物をもらう機会は増える。高額なそれになる。 だが、果たして会社に来た贈り物すべてを自宅に持ち帰って構わないのだろうか。
野地秩嘉