FTXがバイナンスと元CEOを訴訟。詐欺取引であったとして17.6億ドルの回収目指す
債権者に返済目指し
破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXが、暗号資産取引所運営のバイナンス(Binance Holdings Ltd)とバイナンス創業者であり前CEOのチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao:CZ)氏に対し訴訟を起こした。 米デラウエア州破産裁判所に提出された11月10日付けの裁判資料によれば、「少なくとも17億6000万ドル相当の暗号資産が2021年7月にバイナンスに送金された」という。これはFTX創設者であるサム・バンクマンフリード(Samuel Bankman-Fried:SBF)氏によって行われたもので、FTXがバイナンスの株式を買い戻す取引の一環として、バイナンスに不正に送金したと管財人は主張している。 またFTXはこの取引を無効とし、FTXの債権者に資金を返済することを目指しているとみられる。 バイナンスは2019年11日に「FTX.com」の株式の20%を取得。バイナンスはFTXトレーディングの株式をバイナンスの取引所トークンBNB 1,002,739で購入したという。 1年余り後、SBF氏は、WRSと呼ばれる親会社の傘下で、暗号資産事業を米国に拡大。2020年2月頃、バイナンス・エグゼクティブはWRSの18.4%の株式をわずか2ドルで取得したという。 バイナンスはその後2021年にFTXへの投資から撤退。2021年7月にバイナンスとFTXは、FTXがバイナンスとその幹部のFTXトレーディングとWRSの全株式を買い戻すという取引を交渉したとのことだ。 FTXの子会社であるアラメダ・リサーチは、FTXトークン(FTT)、BNB、BUSDの組み合わせで、株式買い戻しに直接資金を提供。これらのトークンの時価総額が少なくとも17億6000万ドルであったという。 アラメダ・リサーチの前CEOであるキャロライン・エリソン(Caroline Ellison)氏は、アラメダには株式買い戻しに必要な資金がなかったと証言しており、訴訟ではFTXとアラメダは 「設立当初から債務超過であった可能性があり、2021年初頭には確実にバランスシート上債務超過に陥っていた」と主張している。 またエリソン氏は後に証言するように、同氏はSBF氏に対し、「このための資金は本当にない」と述べており、アラメダはこの取引をカバーするためFTXの顧客預金から10億ドル以上を拝借したという。 CZ氏は、2022年11月9日の自身のXにて、バイナンスによるFTX買収は、FTXがFTXトークンの流動性危機に陥り、バイナンスへ支援を要請してきたと説明。同氏は「ユーザーを保護する為、FTXの完全買収と(FTXトークンの)流動性の逼迫をカバーすることを意図して、拘束力のないLOIに署名した」とツイートしていた。 翌日10日にCZ氏はFTXの買収方針を撤回。11月11日にFTXは破綻した。 またバイナンスは2022年11月16日、英国議会の財務委員会に対して、FTXの破産を目論んで行動を起こしていたわけではないことを主張する旨の書類を提出している。 その中で、「FTXトークン(FTT)が流動性不足に陥った最初のきっかけは米CoinDeskの記事であり、FTXの破綻の原因はFTXの財務上の不正である」とした。 またバイナンスはFTXによる不正を考慮して「信用できない資産に対する財務的エクスポージャーを減らすために」FTTの売却を発表したのであり、そこにFTXを破産させる意図はなかったと主張。 さらにFTXの買収計画については、「FTXのユーザーと業界を保護する目的でFTXの買収の可能性について拘束力のない趣意書を締結したが、FTXに関する財務デューデリジェンスの結果として断念せざるを得なかった」と主張している。
あたらしい経済編集部