産経コラム問題 韓国の法制度で名誉棄損にあたるのか?
産経新聞と韓国大統領府の対立が波紋を呼んでいます。8月3日、産経新聞のウェブサイト上のみに、「セウォル号事件当日に、朴槿惠(パク・クネ)大統領は7時間以上にわたり行方不明となっていたが、その間、男性と密会していたのではないか」という疑惑をコラムで掲載されました。これに対して、朴槿惠大統領を支持する市民団体が「名誉毀損」だとして告発。ソウル中央地検は、情報通信網法における名誉毀損罪の適用を検討し、コラムを書いた産経新聞・加藤達也ソウル支局長は事情聴取を受けることになりました。 一連の動きについて、日韓双方のメディアや識者、外交関係者も注視し、今後の対応如何によっては新たな火種となるかもしれない異例の事態となっています。はたして今回の産経新聞のネット上のコラムに名誉毀損は適用されるのでしょうか。なぜ、産経新聞のコラムが問題になったのでしょうか。
名誉棄損をめぐる韓国の法制度
韓国の情報通信法(情報通信網利用促進および情報保護などに関する法律)によると「人を誹謗(ひぼう)する目的で情報通信網を通じ、公然と偽りの事実により、他人の名誉を傷つけた者は7年以下の懲役、10年以下の資格停止または5000万ウォン(約495万円)以下の罰金に処する」と規定されています。 産経新聞も、名誉毀損について韓国の刑法は「公共の利益に関するときは罰せられないとも定めており、公益に資する報道だったかどうかが大きな焦点となる。今回のソウル支局長のコラムは、300人以上の犠牲者を出した旅客船セウォル号沈没事故当日に朴槿恵大統領が何をしていたかを主題にしている」と主張しています。 日本では、よく大災害や大事件が起きた時に、首相が何をしていたのか? と話題になります。事件の第一報を受けながらも、ゴルフを続けてプレーした場合や、高級料亭での会食を中断しなかった場合、批判を受けることがあります。つい最近でも、安倍晋三首相が広島市で起きた土砂災害時に、ゴルフを約1時間プレーし続けたことに対して批判の声が上がりました。 同様にセウォル号事件当日に、朴槿惠大統領が7時間も消息不明だったことが、韓国のメディアや世論から批判を受けることはある意味妥当といえます。 また、国家の為政者である限り、失政やスキャンダルの事実があれば、それに対する批判や報道は甘んじて受けるべきです。 コラムの内容が事実に基づき、妥当であるにも関わらず、名誉毀損が適用されれば、「韓国は、表向きは自由主義国家を謳っているが報道の自由はない」とまたもや非難されかねません。また、韓国の国内メディアも萎縮してしまい、健全な報道活動に支障を来しかねません。