「開業後1ヵ月以内に提出」が推奨されている〈開業届〉だが…退職後に独立しても、すぐには提出しないほうがいい「意外なワケ」【シニアキャリアコンサルタントが助言】
「個人事業主」として本格的に事業を始める場合、税務署へ「開業届」を提出する必要があります。受け取れるメリットや注意点について見ていきましょう。行政書士でリスタートサポート木村勝事務所代表の木村勝氏の著書『老後のお金に困りたくなければ 今いる会社で「“半”個人事業主」になりなさい』(日本実業出版社)より、詳しく解説します。
開業準備について
ここでは、一国一城の主である個人事業主としてスタートを切るにあたって必要な手続きについて説明します。 独立開業時の手続きに関しては、ネットを検索すると数多くのサイトがヒットするので、書類の記入方法など詳細はそちらを参照していただくことにして、筆者が個人事業主として実際に独立した際にわかりにくかった点を中心に説明します。 税務署への開業届 副業・兼業といった“片手間”ではなく、“半”個人事業主として本格的に事業をスタートする場合には、税務署へ開業届を提出することになります。開業届とは、個人事業を開業したことを管轄の税務署に届け出る書類のことです。 筆者の場合は、自宅が賃貸で各種登録(行政書士事務所登録など)をするのが難しかったため、外部に超狭小のレンタルスペースを借りました。開業届は管轄の税務署に提出することになっていますが、自宅のあるエリアの管轄税務署に出すのか、それともレンタルスペースのあるエリアの管轄税務署に出すのかでまず迷いました。結論を言うと、個人事業主の場合にはあくまでも個人が事業を行なっている形なので、自宅を管轄する税務署が提出先になります。 また、「開業届は開業の事実があってから1ヵ月以内に提出しなければならない」と所得税法に定められているので、「すぐに出さないと罰則があるのでは?」と思ってしまいます。しかし、提出しないことによる罰則はありません。また、1ヵ月以内に提出することがもちろん推奨されますが、現実的には開業日が提出日より1ヵ月以上前でも特に問題なく税務署は受領してくれるようです。 この開業届の提出に関する注意です。会社を退職することを決めた場合でも、あなたが「当面は職探しをしながらゆっくり考えよう。個人事業主としてセカンドキャリアを踏み出すのもいいかな、あるいは転職して違う会社で働くのもいいな」といった状況の場合には、その提出は要注意です。 会社の雇用保険に加入していた人が失業した場合に受給できる手当に失業手当があります。開業届を出すことで個人事業主として活動を始めたことになり、「失業状態」ではなくなるので、開業届を出すと失業手当が受給できなくなります。 開業したものの売上がないからといっても失業手当は受給できません。もし今後、“半”個人事業主として仕事をしていくか未定で、転職することも考えているような場合で失業手当の受給を検討しているのであれば、開業届はすぐには出さないほうがいいかもしれません。 もちろん、今の会社(あるいは今まで関係の深い会社)と“半”個人事業主として業務委託契約を締結して本格的に個人事業主として働いていくことが決まっているのであれば、開業届を提出して事業をスタートします。
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