復活!? 一度退役の80s高スペック巨大爆撃機を“修復” 一体なぜ? 米空軍ならではの台所事情が
もうすぐ終わりの老朽機、なぜ現役復帰?
アメリカ空軍が、一度退役させたB-1B「ランサー」爆撃機を、再就役させようと修復作業を進めています。2024年4月4日のニュースリリースで明かしました。 【モスボール保管されていた証】日焼けし色褪せた状態で飛んできたB-1B「ランスロット」(写真で見る) それによると「ランスロット」のニックネームを持つB-1B爆撃機85-0081号機が、アリゾナ州のデイビス・モンサン空軍基地にある保管施設から飛行可能状態に戻され、オクラホマ州ティンカー空軍基地まで飛行。ここで任務に復帰するための各種作業が行われているそうです。 B-1Bは、1986年から運用が開始された超音速飛行が可能な可変翼の爆撃機で、合計100機が生産されました。しかし、長年の運用による老朽化と、メンテナンスで手間の掛かる可変翼機構ゆえに、近年は稼働率の低下と運用コストの上昇が問題になっていました。 そのため、一部の機体は早期退役に回されており、現在の配備数は全生産数の半分以下である40機程度となっています。さらに後継機として新型のB-21「レイダー」も開発が進められているため、空軍の計画ではB-21の作戦能力獲得にあわせ、2030年ごろには完全退役する予定です。 ある意味でB-1Bは爆撃機として「終活」時期に向かっている機体とも言えます。それなのに、なぜ退役した機体を任務に戻す必要があるのでしょうか。
事故機を直すよりも安いからね
じつは、B-1B「ランスロット」が現役に戻される理由は、2022年に起きた別のB-1Bの事故が原因です。 その事故はテキサス州ダイエス空軍基地で起きたもので、1機のB-1Bが整備作業のため地上でエンジンを回していたところ、なんとそこから火災が発生。その結果、同機はエンジンだけでなく機体にも大きな損傷を受けて飛行不能な状態となりました。 B-1Bは削減され退役予定も決まっているとはいえ、アメリカ空軍にとっては貴重な戦略爆撃機であることに間違いありません。完全に退役するまでその戦力を維持する必要があり、事故によって機体を損失したのなら、その穴埋めをする必要に迫られたのです。 事故を起こした機体は総額で1500万ドルもの被害を受けており、これを飛行状態まで修復するにはさらに多くの予算が必要となります。 そこでアメリカ空軍がより安い対応策として選んだのが、退役機を現役復帰させること。その白羽の矢が立ったのが、「ランスロット」こと85-0081号機だったというわけです。 B-1Bの運用数削減と、それに伴う機体の退役は段階的に行われていますが、最後に行われたのは2021年で、17機もの機体がこの年に運用から外されています。しかし、うち4機は今回の事故などによる損失に備えて「再飛行が可能な状態」で保管されており、「ランスロット」もこのなかの1機でした。