7~9月期米国実質GDPは前期比年率+2%台半ばか…8月30日公表データから予測する今後の米国経済【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
米国GDP、7~9月実質個人消費は前期比年率+3%台程度か
7月の実績が公表されたので、8月・9月の前月比を各々+0.2%の増加と仮置きし計算すると、7~9月期の実質個人消費の前期比年率は+3.8%になり、実質GDPに対する前期比年率寄与度は+2.6%になります。8月・9月の前月比を各々0.0%の横這いとして計算すると、7~9月期の実質個人消費の前期比年率は+3.0%になり、この場合も実質GDPに対する前期比年率寄与度は+2.0%です。 したがって、7~9月期の実質個人消費の前期比年率が+3台%になるのであれば、実質個人消費以外の残りの項目の前期比年率寄与度合計がゼロでも、4~6月期実質GDP・前期比年率は+3.0%に続いて、7~9月期実質GDP・前期比年率は+2%台の底堅い数字になることがわかります。 個人所得・個人消費のデータの中に貯蓄率のデータがあります。24年は1月4.0%のあと、おおむね低下傾向で2月3.7%から6月3.1%まで5ヵ月連続3%台でしたが、7月は2.9%に低下しました。最近は貯蓄を取り崩して消費をしている感じがする点に留意が必要でしょう。 なお、マーケットが注目する7月PCE(個人消費支出)デフレータは前年同月比+2.5%で6月と同じになりました。また、7月PCEデフレータ・コアは前年同月比+2.6%でこちらは5月。6月と3ヵ月連続で同じ伸び率と、どちらも安定した結果になったことを受けて、8月30日のニューヨーク市場では、9月のFOMCでの利下げ幅が0.5%ではなく0.25%となるとの見方が強まったようです。
米国の実質GDP成長率のリアルタイムの推定値「GDPナウ」
7~9月期実質GDPを事前に判断するときに役に立つ別のデータがあります。そのひとつがアトランタ連銀が算出・公表しているGDPナウです。米国の実質GDP成長率のリアルタイムの推定値といえるものです。GDP成長率を計算する時点までの公表された関連の経済データを反映して推定値が算出され、データ発表日に合わせて公表されています。類似データとしてNY連銀が毎週金曜日に公開している推計値として、NY連銀スタッフ・ナウキャストもあります。 実質GDP推計値…8月30日時点のアトランタ連銀:前期比年率+2.5%、NY連銀:+2.49% 8月30日時点では、アトランタ連銀の推計値が+2.5%、NY連銀の推計値が+2.49%と、どちらもしっかりした+2%台の前期比年率になっています。 パウエルFRB議長の講演から9月のFOMCでの利下げが確実視されています。9月6日に発表される8月雇用統計の結果などにもよりますが、8月30日発表の3つのデータでの7~9月期GDP見込みや、最近のPCEデフレータの動向からみると、9月のFOMCでの利下げ幅に関しては0.5%の大幅ではなく、0.25%になる可能性が高いのではないかと思われます。 ※なお、本記事は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。 宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト) 三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
宅森 昭吉