<育児休業は取りたくても取れない?>現代の男性たちの本音と日本社会の休めない働き方について分析
「育休明けの今、わが家の家事育児の分担感覚を妻に尋ねたところ、『妻が6、私が4くらい』と言われました。育休中に上の子の世話を主に担ったので、幼稚園の様子や子の交友関係など、以前よりぐっと分かるようになりましたね。自分自身も妻も、新生児期のストレスは一人目の時より少なかった感覚があります」 取得のハードルは低くはない。それでもN氏は「子の出生時の父親育休は、全員取るべし、と言いたい」と語る。
偏見に捉われず、理由と状況の分析を
ここで紹介した二人はどちらも、元々育児に当事者意識を持ち、実際に担っている父親たちだ。現代の日本にはまだその意識に欠け、育休を取っても、育児の主体的な当事者になれない父親たちもいるだろう。育児を妻が全面的に担う分業でうまくいっている家庭も、もちろんある。 しかしそのような「育児をしない父親」だけを一般像として固定してしまっては、より多様な家庭や父親たちの実態を見誤ってしまう。過去の家庭や父親のありようを、現代に画一的に押し付けるのもまた、時代錯誤の偏見だ。 21年、新制度の施行前に行われた男性育休の意識調査(パーソナルキャリア社)では、20代・30代の回答者の8割が「育休を取得したい」と回答している。 また本年度経団連調査で、企業にとって「男性の家事・育児を促進するために今後、必要な取り組み」を尋ねた回答では、「男性が育児休業を取得しない・できない理由の把握、状況の分析、改善」(42.1%)が最も多かった。 父親の育児分担の少なさは、昭和の時代に普及した「男は仕事、女は家事育児」の性別役割分業モデルが大きく影響している。しかし要因はそれだけではない。家事育児を主体的に担う父親を家から遠ざける職場には、「休みにくさ」にあふれた働き方が、間違いなくあるのだ。 23年の父親育休の現実から、日本社会の働き方を再考するための、一つの視点を獲得したい。
高崎順子