バイデン氏のG7欠席は本当にあるのか?米債務上限問題のポイントを解説
バイデン大統領がG7広島サミットを欠席する可能性に触れたことで、改めて大きく注目されているアメリカの債務上限引き上げ問題。デフォルト=債務不履行が世界に及ぼす影響や交渉の状況を改めて整理し、大統領が予定通りに日本に行けるのかを分析する。(ワシントン支局・渡邊翔)
■債務上限交渉でG7欠席も…? ホワイトハウスは以前から万一の事態想定か
「(欠席する)可能性はある」 9日のバイデン大統領の発言が、日本政府や日本メディアを驚かせた。債務上限引き上げをめぐる野党との交渉が進展しない場合、19日から始まるG7広島サミットへの対面出席を見合わせる可能性に言及したのだ。翌10日には「交渉の状況次第では、オンラインで参加せざるを得ない可能性もある」とも述べ、日本側には何ともいえない不安感が広がった。 現在、アメリカの内政最大の問題となっている債務上限の引き上げ。連邦政府が国債発行によって借りられる債務の総額が法律で定められているアメリカでは、1月に債務総額が上限の約31兆4000億ドルに到達。財務省は、議会が債務上限の引き上げなどに応じなければ、来月1日にも債務不履行(デフォルト)に陥る恐れがあると警告している。無条件での引き上げを求めるバイデン政権と、政府の歳出削減が条件だとする野党・共和党との協議は、依然妥協点を見いだせていない。 実はホワイトハウスは、少なくとも5月初めの時点で、すでに万一の場合に備えた頭の体操をしていた節がある。5月初旬、ある外交筋が記者にこう語った。「ホワイトハウスと話したが、現時点でまだ、バイデン大統領の日本訪問は確定したわけではないと言うんだ。債務上限問題の解決の糸口が見えないままなら、スケジュールに変更が出たり、最悪欠席という選択肢もゼロではないということらしい」 この人物は、過去にオバマ大統領やクリントン大統領が、債務上限問題や予算協議の行き詰まりを理由にアジア訪問・国際会議出席を見送った「先例」を挙げた。この時は記者も「まさか」と思ったが、翌週にバイデン氏本人が欠席の可能性に言及。内政問題が外交より重視されるという、政治の現実を目の当たりにすることになった。